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そしてまたしばらくしたある日。
季節は7月初め。
なのに今日は肌寒くてブレザーを引っ張り出したそんな日の放課後、渡り廊下を歩いているとAの背中が見えた。
途端に体が熱を帯びる。
とその瞬間、Aの窓越しに物体が飛んできて、
「危ない！」
窓が割れる音、めちゃくちゃになったガラス、野球ボール。
状況を理解した俺は、
「A！」
数十メートル離れたAに怪我はない。
だって、
「怪我ない？」
覆うようにして、康二がAを守っていた。
「うん、大丈夫。康二は？」
「大丈夫。無傷やで。
怖かったやろ？」
ひたすら優しい康二にAは安心して、
「でも、康二が助けてくれたから本当よかった」
そう言われた康二はほんのり顔を赤らめて、Aの頭を撫でた。
出る幕ないじゃん。
もう、俺いらないのかな。
また俺は2人に声を掛けれなかった。
「A、めめ、バイバイ！」
「バイバイ」
「じゃーな」
Aと俺と康二。
変わらないはずの日常に、変わりつつありげな俺の心。
最近やけに短く感じる、康二と別れてからの俺とAだけの帰り道。
だけど急に雨が降ってきた。
「え、最悪！」
「やばいな」
「傘ないよどうしよう」
「A、ダッシュするぞ」
「え？」
俺は今日久々に引っ張り出したブレザーを傘代わりに広げて、自分と一緒にAを覆う。
「走るぞ！」
「うん！」
俺らは雨の中を駆け抜けた。
走っている時間だけ、2人だけの世界にいるような気がした。
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作者名：キキララ
| 作成日時：2021年9月19日 23時
