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(You side)
「おはよ、A」
「お、おはようございます。阿部先輩」
ニコッと微笑む先輩は、何の疑問も持たず私の隣に座る。
せめて心の中だけでも呼吸を整えなきゃ自分を落ち着かせられない。
「どう？コンクールの課題曲」
「難しいです。久々な私にとっては特に」
「そっか。中２の夏まで吹部だったんだっけ？」
「...まあ、はい」
「俺で良かったら教えるよ」
「いいんですか？」
「うん、勿論。俺の拙い教え方でもAが上手になってくれんなら、すごく嬉しいから」
なんなら今から！と先輩は言って、即座に取り掛かってくれた。
この人が私にくれる言葉も表情も、行動も、
全て勘違いさせられそうになる。
というか、もう勘違いさせられてる。
「ここね、難しいよね。だから時間かかっても全然大丈夫だよ」
「そうですか...？」
「うん。まだ日にちあるし、自信持って！」
「ありがとうございます。ブランクある私にとっては阿部先輩とか深澤先輩たちいなかったら、どうなってただろうって思います」
「へへ、すごく感謝してくれてるじゃん。
Aが懐いてくれただけでも俺は嬉しいよ」
綺麗すぎるその言葉も、彼から発せられると何にも嘘に聞こえない。
でも阿部先輩が優しいのなんて、特に吹部なら皆知ってる。
「そういやさ、阿部ちゃんは好きな人いないの？」
「いないよー」
「えーもったいない！恋しなって！」
「したいよ」
別のパートの女の先輩と、楽しそうに話す姿が目に映る。
同級生の特権だよね。あんな風に話せるのって。
私も同級生になりたかった。
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作者名：キキララ
| 作成日時：2022年12月1日 17時
