10. 負けず嫌いはお互い様 ページ11
「宮坂、上がれ！」
涼野からパスを受けて一気に前線まで駆け上がる
周りのプレーについていくのに必死だった私は
吉良とした賭けのことなんて忘れていた
残り時間は1分で同点
これが最後の攻撃になると
キャプテンを務める南雲が言っていたのを思い出す
此処でミスをしたら
相手の攻撃に転じてしまうだろう
練習であるにも関わらず
胃が痛くなる程プレッシャーを感じていた
「全力で来い！俺を楽しませろ！」
砂木沼さんはゴール中央で悠然と構えている
シュートもまともに打てない私にとって
正面突破は至難の技
なるべくゴールポストスレスレを通るように
ゴールの端を狙ってボールを蹴る
しかしボールはポストに命中し
軌道を変えて跳ね返ってきた
「はっ、ざまぁ！」
心底愉しそうに笑うのは吉良だ
悪戯が成功した子供のような顔で笑うから
少しだけドキッとしてしまう
辛辣な言葉は相変わらずだが
「ばーか！余裕ぶっこいてる場合かよ！」
そう吠えてボールをトラップしたのは南雲だった
不敵な笑みを浮かべた彼は
慣れた動作で必殺技を放つ
必殺技で対抗しようとする砂木沼さんだが
発動までのタイムラグがあることは
今までの練習の中で把握出来ていた
真っ直ぐ飛んでいくボールの軌道を変えるべく
強烈なシュートに身体をぶつける
「…っ!!」
焼けるような熱さと強烈な痛みが身体を襲い
反動で吹き飛ばされた身体は地面に打ち付けられた
しかし軌道修正には成功したようで
砂木沼さんが必殺技を発動する前に
無事シュートが決まったようだ
試合終了のホイッスルが遠くから聞こえてくる
「阿呆かお前！何してんだよ！」
真っ先に駆け寄ってきたのは意外にも吉良だった
そこでやっと勝負のことを思い出した私は
べーっと舌を出す
「…私の、勝ち」
「んなこと言ってる場合か！アトミックフレアに突っ込んでく馬鹿が何処に居るんだよ」
「悪ぃ宮坂、大丈夫か！」
「ううん、私が勝手に突っ込んだだけで」
「いいから早く冷やせ。痕になってもいいのかよ」
差し伸べられた手を素直に握ると
起き上がらせてくれる吉良
ぶっきらぼうな言い草には腹が立つけど
心配してくれていることは分かるから
私は大人しく彼の言うことを聞き入れることにした
肩を借りてベンチに向かう途中
彼は静かに呟くのだった
「…お前のサッカー、真っ直ぐ過ぎるんだよ」
「＿＿＿＿ん？」
「何でもねえよ。今回は俺の負けだ」
そう言って優しく笑った
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しろ(プロフ) - いづうさん» ありがとうございます嬉しいです……！ (2019年2月25日 19時) (
レス) id: ce9889e8a9 (このIDを非表示/違反報告)
いづう(プロフ) - 興味をそそる書き方にもう敬服しまくりです！！文面が洗練されてて読みやすかったです！つい一気に読んでしまいました…。ガンバレ夢主ちゃん！吉良を見返したれ！ (2019年2月24日 22時) (レス) id: a4beff7793 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しろ | 作成日時：2019年2月20日 18時
