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83*日本語。 ページ36

「私の日本語、優しい…?」

日本語が優しい、なんてあんまり言われたことないから、びっくりしてしまう。

「オレも思ってた」

さっきまで眠そうだった二宮くんの目はしっかり開いてて、色素の薄い瞳の奥が私を捉える。

「翔ちゃんは正しい日本語なの。綺麗で、きっちり。でもA先生のはそれから角を削ったみたいで、ふわっとしてるから、見てもらいたいの」

確かに、翔くんの言葉はいっつも綺麗で、
辞書で調べなきゃいけな意味がわかんないような言葉をたくさん使う。

だけど私は一つの言葉が沢山の意味を持って、まだ日本語がほわっとしていた頃の文章もたくさん読んでるから、

無意識に『優しい言葉遣い』になってるのかもしれない。

「あ、ありがとね」

なんでだろう。
見た目とかを褒められるよりも、私の仕事で、生きがいである言葉を、大切な生徒に褒められたことがすっごく嬉しくて、朝から泣きそうだ。

「じゃあこれ、見させてもらうね」

きっと一生懸命考えて、何度も書き直したんだろう、
相葉くんから受け取った原稿用紙は少し黒ずんでる。

彼の想いがたくさん詰まった紙は、想像以上にずっと重たく感じた。

「二宮くんは、今日は付き添いできたの?」

朝は弱いはずの二宮くんがこんな時間に学校にいるなんてレアだ。

「オレも先生に用事ー。だから相葉さん、バイバイ」
「えーっ、聞いちゃダメなの?」
「ダメでーす」

なんだよそれーって、相葉くんが口を尖らせる。

「健康マラソンでもしてきてください」

二宮くんが相葉くんの背中を出口の方にむかってぐーっと押す。

「ひどいなー、にのちゃん」

ちょっと不服そうだけど、職員室を出て行った相葉くんはなんだか楽しそうだ。

二宮くんとこうやって冗談を言って笑い合っていられるのも、残りわずかだって、心のどこかでは思ってるのかな。

ちょっぴり、余計な詮索をしてしまう。

「で、どうしたの?」

翔くんの椅子にちょこんと座った二宮くんは、足をぶらぶらさせてて、

今日も正直、絶好調にあざとい。

「先生、オレ出発日決まったの」
「いつになったの?」
「3月の24日」

彼の旅立ちの日は、
思ったより、近かった。

84*託す。→←82*間近。



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とも(プロフ) - 初めまして。とても素敵なお話で…ちょっとうるうるしちゃいました。智くん担の私的には…智くんと…って思ってしまいましたが。翔くんの甘く切ない気持ちが心に響きました。 (2020年6月30日 13時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
ゆうにゃん - めっちゃ楽しみです(≧∇≦) (2020年5月19日 1時) (レス) id: 8772c16e2a (このIDを非表示/違反報告)
璃夢(プロフ) - sHoさん» sHoさん、コメントありがとうございます。見つけて、読んで下さってとても嬉しいです!卒業式のシーンは、書いている私も泣きそうになってました笑 これからもどうぞよろしくお願いいたします(^ ^) (2020年4月19日 15時) (レス) id: bc361fa2d6 (このIDを非表示/違反報告)
sHo(プロフ) - はじめまして。昨日、ふと、この作品に出会い…読み終えました。卒業式では一緒に泣きながら(笑)素敵なお話、ありがとうございました。 (2020年4月19日 2時) (レス) id: 333f9c0231 (このIDを非表示/違反報告)
璃夢(プロフ) - みかぽさん» みかぽさん 完結まで支えてくださって本当にありがとうございました。seasonぜひ聞いてみてくださいね^ ^ これからもよろしくお願いします! (2020年4月18日 22時) (レス) id: bc361fa2d6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:璃夢 | 作成日時:2020年1月16日 22時

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