フラグ73 ページ34
「お疲れ様です、休憩しませんか?」
お茶を持って来たのは敦だった。
「敦君。ありがとう」
『ありがとうございます!』
喜ぶ太宰とAの横で、敦は思わず呟いた。
「すごい......」
丁寧な字で埋め尽くされたメモ帳。
その脇に積まれた資料とパソコン。
黒鉛がついたAの右手は、彼女の努力をそのまま物語っている。
「ふふ、すごいだろう?Aちゃんは」
覚えが良いのだよ、と敦の呟きを聞き逃さない太宰が言う。にやっと意地の悪い笑みを向けられて、敦は思わずお盆で顔を隠した。
そんなことが起きているとはつゆ知らず、Aはペンを走らせたまま笑った。
「そんなことないです。皆さんに助けてもらってばっかりで......よし、できた」
大きく伸びをして、Aもようやく休憩に入った。
夕方の探偵社。
制服姿のAと、傍らに座る太宰、山積みの資料を眺める敦。雲に隠れた夕日の代わりに灯り始めた街の明かりが、一日の終わりを穏やかに告げている。
「あれから一週間経つけれど、どうだい? 」
遊園地事件の後から、Aは放課後に探偵社へ足を運ぶようになった。目的は主に2つだ。
1つはAが異能、それを公使する者や組織について知り、知識を増やすためだ。
もう無関係だとは言っていられない。自分のことを自分で守れるようにしたい、と彼女が自分から申し出た。
そして、そんな彼女を守るのが探偵社の最大の目的だった。毎日来るように習慣をつけてしまえば、異変にいち早く気づくことができる。
『そうですね......ここに寄ってから帰るようになって歩く距離が増えたので、体力がついた気がします。少しだけですけど』
Aが笑うと周りに花が咲くようだ。敦はいつもそう思う。暖かな笑顔に自然とつられてしまう。
敦は、このひとときを心待ちにしている自分に気づいていた。
彼女が帰ると、胸がざわつき始めることを知った日から。
いいや、もっと前。
自分と向き合い、他人に手を差しのべる彼女を見た日から。
『じゃあ、そろそろ失礼します』
「ああ。気を付けて帰りたまえよ」
純粋な彼女だから。
だから。
「......帰ったね」
「はい」
「じゃあ、始めようか」
彼女の影の黒さに、目を背けたくなる。
「特務科への報告書、頑張って書こうじゃないか」
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花岳(プロフ) - チョコレヰトさん» ひゃーー!お褒め頂き光栄です......!ありがとうございます。相変わらずだらだら更新していくと思いますが必ずや完結させてみせますので!応援よろしくお願いします! (2019年2月11日 11時) (レス) id: 95c5868039 (このIDを非表示/違反報告)
チョコレヰト - おおお…面白いですね!ギャグ一直線って言うわけでもなく、かと言って重すぎるシリアスも無く…!!丁度良くて、見つけて一気読みしてしまいました…w応援してます!更新頑張ってください!いつまででも待ってます! (2019年1月27日 22時) (レス) id: 9bf0bfde55 (このIDを非表示/違反報告)
花岳(プロフ) - 結愛さん» 素敵なほのぼの文芸部だったんですね...こちらはガチガチ文芸部です...〆切前は常に修羅場で、よく悲鳴があがってます。それはそれで楽しいんですけどね!他校の部活の様子を聞けて嬉しいです!コメントありがとうございました!! (2018年9月19日 1時) (レス) id: 95c5868039 (このIDを非表示/違反報告)
結愛(プロフ) - 私も文芸部だったのですが、私の居た文芸部とは違うのですね…。(私の居た文芸部では皆好きなようにお絵描きしてました) (2018年9月17日 13時) (レス) id: 4e4bc357c1 (このIDを非表示/違反報告)
花岳(プロフ) - 紅夏さん» ありがとうございます!!!!もう、ほんとにありがとうございます。待ってる、と言って頂けるだけで頑張れます。絶対書き上げますので、待ってて下さい!、 (2018年9月17日 11時) (レス) id: 95c5868039 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花岳 | 作成日時:2018年1月10日 23時