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フラグ52 ページ13

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道路を挟んで反対側の公園。
三人の少年らがボールを追い掛けようと、方向を変えて、脚に力を込め、腕を上げ...


行かなきゃ。


気付いた時には体が動いていた。


太宰さんとの手を振りほどいて、走る。

途端、体の底から力が湧き上がる。

今度こそ、この手でボールと少年の笑顔を守れる事を証明するんだ。

脚を踏み出す。手を伸ばす。

ボールはころころと道路に前進する。

届け。届け。届け、届け、届け、届け届け届けっ!



「危ない!!!」



ぐん、と右腕が後ろに引っ張られた。
体もそれにともなって引き寄せられる。

『!!』

誰だ。何だ。私を止めるな。離せ。


振り返る。

そのまま視界いっぱい広がった砂外套に抱き止められた。


「Aちゃんっ!!」


まともに一喝を浴びて、軽く衝撃を受ける。
沸き上がった力が消えていく。


両肩に置かれた手の重みを認識した瞬間、背後の轟音が耳を裂いた。

破裂音?

目だけで道路に注意を向けると、盛大なクラクションと共に走り去っていくトラックが見えた。


「Aちゃん...君は...!」


視線の先には、轢かれたサッカーボールが力なく横たわっている。

タイヤ痕がくっきり残ったへこみ。
その反対、五角形が剥がれて中の黒いゴムが剥き出しになっている。

目が覚めるようだった。
私は、車に飛び込んで行ったのか。




「あの...!ボール、拾おうとしてくれて、ありがとうございます。」


いつの間にか少年達がこちら側に来ていた。
その腕の中でサッカーボールだったモノがうなだれている。


「こいつは助からなかったけど、俺達もっとサッカー頑張ります。もう、こんなことが無いように...」



彼らの後ろ姿はやっぱり寂しげだ。

ああ、これじゃあ、誰も、救われない。





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花岳(プロフ) - チョコレヰトさん» ひゃーー!お褒め頂き光栄です......!ありがとうございます。相変わらずだらだら更新していくと思いますが必ずや完結させてみせますので!応援よろしくお願いします! (2019年2月11日 11時) (レス) id: 95c5868039 (このIDを非表示/違反報告)
チョコレヰト - おおお…面白いですね!ギャグ一直線って言うわけでもなく、かと言って重すぎるシリアスも無く…!!丁度良くて、見つけて一気読みしてしまいました…w応援してます!更新頑張ってください!いつまででも待ってます! (2019年1月27日 22時) (レス) id: 9bf0bfde55 (このIDを非表示/違反報告)
花岳(プロフ) - 結愛さん» 素敵なほのぼの文芸部だったんですね...こちらはガチガチ文芸部です...〆切前は常に修羅場で、よく悲鳴があがってます。それはそれで楽しいんですけどね!他校の部活の様子を聞けて嬉しいです!コメントありがとうございました!! (2018年9月19日 1時) (レス) id: 95c5868039 (このIDを非表示/違反報告)
結愛(プロフ) - 私も文芸部だったのですが、私の居た文芸部とは違うのですね…。(私の居た文芸部では皆好きなようにお絵描きしてました) (2018年9月17日 13時) (レス) id: 4e4bc357c1 (このIDを非表示/違反報告)
花岳(プロフ) - 紅夏さん» ありがとうございます!!!!もう、ほんとにありがとうございます。待ってる、と言って頂けるだけで頑張れます。絶対書き上げますので、待ってて下さい!、 (2018年9月17日 11時) (レス) id: 95c5868039 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花岳 | 作成日時:2018年1月10日 23時

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