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ふと噂が脳裏に過る。雨の日に現れる男子学生の幽霊。背中に走る"見覚えのある"寒気に、全身の鳥肌が栗立ったのが分かる。
この寒気は、この怖気は。以前よりずっと昔から味わってきたこの感覚は、確かに"あれ"がいることを示している。
無数の雨音の中で、緊張と恐怖で身を包みながら、腕の中の本を抱きしめた。自分の身体が震えているのが分かる。
一つ深呼吸をして、早鐘を打つ心臓を落ち着かせる。ぎゅっと目を瞑る。
意を決して、横を見た。
「_____」
え、と素っ頓狂な声が漏れそうだった。
だって、あまりにも思っていたこととかけ離れていたから。きっとそこには、どうせ血まみれの半透明の男子学生でも立ってて、こちらを恨めしそうに見つめていると思っていたのだ。
時間が止まったように感じて、一瞬あれ程響いていた雨音が聞こえなくなる。
そこに立っていたのは、黒い学ラン姿の背の高い青年だった。
ズボンのポケットに手を入れ、すらりと立って本棚を見上げている。見上げているだけで、本を手に取ろうとしない。それはただ眺めているだけのようだが、何処かもどかしいような感じがした。本を取りたいけど、取れないような。
着ている制服は学ランで、前を開けている。この高校はブレザーだから、そこからして異質の存在だ。
黒い髪、曇り空の灰色と混じった青い切れ長な目。精悍な顔立ちは確かに"超絶イケメン"と言われても頷ける。
まさに、老若男女誰もが惚れそうな容姿。
きっと幽霊だから透けてしまって取れないのだろうと、冷静に落ち着いて察してしまうほど、彼の容姿は幽霊とは考えられないくらい綺麗だった。
しばらく男に釘付けになっていたが、すぐに意識が戻ってくる。
男は幽霊だ。この気配は、確かに『幽霊のもの』だ。幽霊には関わらない方がいい。私の経験則がそう告げている。
男から目を離し、その場からそっと離れる。腕に持っていた本は、悪いと思いつつテーブルの上に置いておき、図書室から静かに出た。
後ろ手にドアを閉めた時、強烈な安堵と脱力感が一気に襲ってきた。足から力が抜け、へなへなとその場にしゃがみ込む。
まさか、この日にここで出会うとは予想だにしなかった。緊張のせいでまだ胸が痛い。
「恨むぞ霊感……」
誰とも向けられずに放った言葉は空間に溶けていき、丁度よく昼休みの終了を告げるチャイムが鳴り響く。
私は力なく立ち上がり、さながらゾンビのように教室へ向かった。
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燕＊(プロフ) - ちくわのカルパッチョさん» コメントありがとうございます！あの時はリクにお答えして下さったこと、ご愛読やお気に入りまでして頂いて、心から感謝申し上げます…！お褒めの言葉、とても嬉しいです！これからも当作品を宜しくお願い致します！ (2016年1月6日 2時) (
レス) id: f04a1805d5 (このIDを非表示/違反報告)
ちくわのカルパッチョ(プロフ) - だいぶ前にイラストのリクを承った者ですが、それがきっかけとなりあの時からこの作品をお気に入り登録させていただいています。とても描写が綺麗で繊細でいつも引き込まれます。これからの展開が楽しみです＾＾ (2016年1月5日 23時) (レス) id: 5e0cf1c1a8 (このIDを非表示/違反報告)
燕＊(プロフ) - 伝吉さん» コメントありがとうございます。紹介の件は大丈夫です。まだそこまでネタバレしてはいけない所まではいってもないので← イラスト、楽しみにしておりますね！ (2016年1月4日 22時) (レス) id: f04a1805d5 (このIDを非表示/違反報告)
伝吉(プロフ) - 近日中にイラストを上げられそうなのでご報告にあがりました。そこで一つ提案なのですが、この小説を私の作品で紹介しても構いませんか？勿論、ネタバレしないように気を付けます。どうでしょうか？ (2016年1月4日 21時) (レス) id: bc33d6f617 (このIDを非表示/違反報告)
燕(プロフ) - 伝吉さん» うわああわざわざ読んで下さってありがとうございます！とても励みになります…。これからも日々精進して参ります！ (2016年1月1日 0時) (レス) id: f04a1805d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：燕 | 作成日時：2015年7月17日 1時
