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雨地に肩を小突かれ、私は顔が険しくなった男子の顔を見る。私はまたやってしまったのだと口を噤み、紛らわすように下手くそに笑うが、訝しげに見下ろす男の表情は変わらない。
立ってしまった悪評度はどうしようもない___私は頭を掻く。雨地もさっさと話を変えろとでも言いたげな雰囲気なので、とりあえず話を逸らすため、何ともなさそうな表情を作りながら、新たな話題に切り変える。
「不良たちは見知らぬ誰かが来て倒してくれた。お礼はその人に。
それよりも、なんであの不良たちに絡まれていたの？」
途中で口を挟ませないよう口早に話を進める。男子は困惑した表情を浮かべるが、すぐにいつもの不機嫌そうな顔に戻る。
「……お前に関係ない」
彼はそう突き放してくる。どうしても隠し通すらしい。
あの時の気まずい雰囲気は一体何処へやら、私は躊躇せず更に男子の内面に踏み込んでいく。
「何か理由でもあるはず。お節介かもだけど、話を聞くだけなら私にも出来るよ」
思いが本気であることが伝わるように、男子の目を真っ直ぐに見つめながら、はっきりと伝える。
それに、これは言うつもりはないが___これから彼が不良たちに絡まれてやられてしまうと考えると、いくらそれが赤の他人でも良い気がしない。一度気にかけると、簡単には放っておけない性質が私にはあるようだ。雨地の記憶探しの手伝いを進んで提案したのも、きっとそのせいだろう。
男子はつり目を丸くすると、深いため息を吐いて、それから後頭部を掻き毟った。
「これはオレの問題だ。もう近づいて来んな。……あの女といい、面倒だ」
男子は素っ気ない言葉で強制的に話を終わらせる。中断させられた事に気づいた時には、男子は私に背を向け公園から立ち去っていた。小さくなっていく背中からは、強気な性格と伺えた男子が少し程弱って見えて＿＿その背中を、私は止めることが出来なかった。
やがて見えなくなると、私は力が抜けたように足元の水溜りに目を落とした。水面に、こちらを見つめる雨地の姿が視える。
「……雨地君」
水溜りの雨地に向かって、声を掛けた。
その時、私の頭の中は、ある一つの考えがあった。確証はないが、繋がりはあるように感じて。
「晴香が言ってた男子って、もしかして」
私は敢えて、そこで区切ってみた。
それから続く言葉を、雨地の考えを、聞いてみたいと思ったのだ。
雨地は今はいない男子の背中を見て、
「……かもな」
とだけ、呟いた。
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燕＊(プロフ) - ちくわのカルパッチョさん» コメントありがとうございます！あの時はリクにお答えして下さったこと、ご愛読やお気に入りまでして頂いて、心から感謝申し上げます…！お褒めの言葉、とても嬉しいです！これからも当作品を宜しくお願い致します！ (2016年1月6日 2時) (
レス) id: f04a1805d5 (このIDを非表示/違反報告)
ちくわのカルパッチョ(プロフ) - だいぶ前にイラストのリクを承った者ですが、それがきっかけとなりあの時からこの作品をお気に入り登録させていただいています。とても描写が綺麗で繊細でいつも引き込まれます。これからの展開が楽しみです＾＾ (2016年1月5日 23時) (レス) id: 5e0cf1c1a8 (このIDを非表示/違反報告)
燕＊(プロフ) - 伝吉さん» コメントありがとうございます。紹介の件は大丈夫です。まだそこまでネタバレしてはいけない所まではいってもないので← イラスト、楽しみにしておりますね！ (2016年1月4日 22時) (レス) id: f04a1805d5 (このIDを非表示/違反報告)
伝吉(プロフ) - 近日中にイラストを上げられそうなのでご報告にあがりました。そこで一つ提案なのですが、この小説を私の作品で紹介しても構いませんか？勿論、ネタバレしないように気を付けます。どうでしょうか？ (2016年1月4日 21時) (レス) id: bc33d6f617 (このIDを非表示/違反報告)
燕(プロフ) - 伝吉さん» うわああわざわざ読んで下さってありがとうございます！とても励みになります…。これからも日々精進して参ります！ (2016年1月1日 0時) (レス) id: f04a1805d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：燕 | 作成日時：2015年7月17日 1時
