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雨はまだ止まず、降り続いている。少しずつ弱くなってきているが、未だしぶとく残っているあたり、神は何としても大地に恵みを与えたいらしい。これ以上降ったら降ったで大洪水という天災も起こるのだが、起こそうとして降らせているのなら神は残酷である。
___と、曇り空を見上げ傘を広げながら、私はそう思った。雨地と会話をせずに沈黙のまま進むから、気まずくなって空を見上げただけの話だ。
高校周辺は水溜りが多くて、かなりうんざりさせられる。避けたくとも水溜りがない所が少なくて、うっかり水を踏み潰すこともあるために、どう足掻こうがローファーを濡ら して帰らざるを得ないのだ。おまけに霊感なしには見えないはずの雨地までも、水面に映りこんでまさに幽霊見放題だ。
雨地を見て叫ばれるのも困るので___霊感ありにしか見えないのかもしれないが___ここは足早に過ぎ去るのが一番である。
水溜りを注意して避けながら、私は頭の中に占めていた話題を引っ張り出してみた。
「晴香がなぁ……好きな人か。信じられないな」
それには雨地も反応した。
「それが普通なんじゃないのか。あんたはどうなんだ」
そこで私に振ってくるか。
私は雨地の端正な顔を、不満気に見つめてみせた。
「個人の自由ってやつ。好きならば何とかして付き合えばいい、いなければ独身であればいい、そういう事」
前から心の中で掲げていた持論を持ってくると、雨地はそれ以上何も言わなかった。結局のところ、恋愛は人の自由だ。無理して付き合う事はないはずだと、私は密かに思い込んでいる。
何か話がずれた気がして、元々の話題を修復してみる。
「……って、違う。そっちじゃなくてさ、晴香の好きな人、誰か気にならない?」
「気になるのか?」
質問を質問で返され、思わず言葉が詰まる。
「う、き、気になるよ……友達なんだから、変な男に引っ掛かりでもしたら嫌だし。
それに傷だらけって事は、常日頃喧嘩ばかりしてるかもじゃない」
「……友人、だからか」
「え?」
ふと寂し気に呟く雨地の言葉。私はそれを聞き逃してしまい、何と言ったか問うた。だが、雨地がそれを再び話す事はなかった。
突然、近くから怒声が聞こえたからである。
「え、何……?」
「あそこからだ、行こう」
雨地が指さしたのは、いつか私をブスなどと罵った男がいた路地裏の入り口。
どことなく嫌な予感を感じながら、私達は薄暗い路地裏へと入っていった。
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燕*(プロフ) - ちくわのカルパッチョさん» コメントありがとうございます!あの時はリクにお答えして下さったこと、ご愛読やお気に入りまでして頂いて、心から感謝申し上げます…!お褒めの言葉、とても嬉しいです!これからも当作品を宜しくお願い致します! (2016年1月6日 2時) (レス) id: f04a1805d5 (このIDを非表示/違反報告)
ちくわのカルパッチョ(プロフ) - だいぶ前にイラストのリクを承った者ですが、それがきっかけとなりあの時からこの作品をお気に入り登録させていただいています。とても描写が綺麗で繊細でいつも引き込まれます。これからの展開が楽しみです^^ (2016年1月5日 23時) (レス) id: 5e0cf1c1a8 (このIDを非表示/違反報告)
燕*(プロフ) - 伝吉さん» コメントありがとうございます。紹介の件は大丈夫です。まだそこまでネタバレしてはいけない所まではいってもないので← イラスト、楽しみにしておりますね! (2016年1月4日 22時) (レス) id: f04a1805d5 (このIDを非表示/違反報告)
伝吉(プロフ) - 近日中にイラストを上げられそうなのでご報告にあがりました。そこで一つ提案なのですが、この小説を私の作品で紹介しても構いませんか?勿論、ネタバレしないように気を付けます。どうでしょうか? (2016年1月4日 21時) (レス) id: bc33d6f617 (このIDを非表示/違反報告)
燕(プロフ) - 伝吉さん» うわああわざわざ読んで下さってありがとうございます!とても励みになります…。これからも日々精進して参ります! (2016年1月1日 0時) (レス) id: f04a1805d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:燕 | 作成日時:2015年7月17日 1時