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入浴と歯磨きを終え、寝巻きに着替えた私は、濡れた髪を拭きながら自室に戻っていた。
手探りで壁の電源を探し、付ける。暫し点滅して、部屋を照らす。
ドアを閉めると、一瞬で静寂が部屋の中に広がる。時計が時を刻む音が、その静寂を際立たせる。
部屋を眺め、何も変わってないことを確認してから、部屋の中を進んだ。
「雨地君は……まだ帰ってきてないのか」
ベッドに腰掛けながら、私は呟く。
夕食時は勿論、夕食を終えた後、入浴の後、歯磨きの後____雨地が出て行ってからだいぶ時間が経ったが、雨地は未だに帰ってこない。メリーさんだって電話をするのだから、彼も電話くらいしてもいいのにと思う。
一抹の不安が心に生まれたが、そもそも幽霊である彼に心配も何もないのではないか、と思い込んでおく。霊媒師にでも出くわして強制的に成仏させられたら、彼にとっても私にとってもたまったものではないが。
雨地は、恐らく大丈夫だ。彼も彼なりに慎重に行動しているんだと考えれば、平気だろう。
こうして考えると、彼は本当にマシな幽霊なんだと思える。まともに意思疎通が取れたのは恐らく雨地だけだろう。
これまで出会った幽霊と言えば、酷い外傷と、支離滅裂な言動、意味不明な行動をする者ばかりだった。
それに比べると、彼は綺麗だ。綺麗すぎる。
まるで、生き埋めにでもされたかのように。
「……」
頭を振って、嫌な考えを飛ばす。
他人の死因なんて、考えるだけでも勘弁だ。
それよりも、だ。
「叔父さん、何であんな事を……?」
"幽霊って信じるか?"
確かに、叔父の口から飛び出してきた言葉。それは、自分の中では幽霊の存在を信じている、とでも言っているようなものだ。
私は自らの霊感を悠太郎に言っていない。もしかしたら何処かで漏らしたのかもしれないが、私の中では言っていない。
幽霊の存在を信じざるを得ない、そんな出来事でもあったのか?
私は力無くベッドに倒れ込んだ。
「……駄目だ、わからん」
いくら頭を捻って導き出した答えだろうが、それが正答なのか分からない。
ただ今は、雨地と共に解明せざるを得ないのだ。
◆
翌日。6時ぴったりに起き、一階へ。
昨日から気になっていたが、雨は続いていた。これまた長く続きそうな小雨だ。
椅子に座ってぱんを頬張りながらテレビを見ていると、ふと背後から声を掛けられた。
「よぉ、早起きだな」
聞いた事のある声に、私は振り向く。
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燕*(プロフ) - ちくわのカルパッチョさん» コメントありがとうございます!あの時はリクにお答えして下さったこと、ご愛読やお気に入りまでして頂いて、心から感謝申し上げます…!お褒めの言葉、とても嬉しいです!これからも当作品を宜しくお願い致します! (2016年1月6日 2時) (レス) id: f04a1805d5 (このIDを非表示/違反報告)
ちくわのカルパッチョ(プロフ) - だいぶ前にイラストのリクを承った者ですが、それがきっかけとなりあの時からこの作品をお気に入り登録させていただいています。とても描写が綺麗で繊細でいつも引き込まれます。これからの展開が楽しみです^^ (2016年1月5日 23時) (レス) id: 5e0cf1c1a8 (このIDを非表示/違反報告)
燕*(プロフ) - 伝吉さん» コメントありがとうございます。紹介の件は大丈夫です。まだそこまでネタバレしてはいけない所まではいってもないので← イラスト、楽しみにしておりますね! (2016年1月4日 22時) (レス) id: f04a1805d5 (このIDを非表示/違反報告)
伝吉(プロフ) - 近日中にイラストを上げられそうなのでご報告にあがりました。そこで一つ提案なのですが、この小説を私の作品で紹介しても構いませんか?勿論、ネタバレしないように気を付けます。どうでしょうか? (2016年1月4日 21時) (レス) id: bc33d6f617 (このIDを非表示/違反報告)
燕(プロフ) - 伝吉さん» うわああわざわざ読んで下さってありがとうございます!とても励みになります…。これからも日々精進して参ります! (2016年1月1日 0時) (レス) id: f04a1805d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:燕 | 作成日時:2015年7月17日 1時