白のリコリスが咲く8【Harry potter】 (ページ39)

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「A・グレイディ__」

Aは、自分の名前を呼んだそのしわくちゃの妖精にも見覚えがあった。

シリウスの屋敷である〝グリモールド・プレイス〟に居た屋敷しもべ妖精であり__シリウスが亡くなってからは、ハリー専属の妖精となったクリーチャーだ。

彼は、ホグワーツで働く事やハリーを新しい主人とする事を頑なに受け入れなかった為に、ドビーと衝突することも、しばしばあった。

〝人狼のなりそこない〟と意地悪くAのことを呼び、あまり目も合わそうとしなかったクリーチャーがこんなにも強い眼差しを自分に向けてくれた事にAは驚きを隠せなかった。

今まで一度も、彼に名前を呼ばれたこともなかったのだ。

すっかり雰囲気が変わった彼の胸には、キラキラ輝くロケットペンダントが下げられている。

「ドビーは、変わり者だった。だけど、ドビーの心はいつも真っ直ぐだった___こんなクリーチャーにも、ドビーはいつでも真っ直ぐだった。ここで逃げてしまう事は、ドビーのした事を無駄にする事と同じだ。クリーチャーは、ドビーの為に、ハリー様の為に___勇敢なレギュラス様の為に、そして、今宵ここに現れたA・グレイディの為に力を使う！！」

クリーチャーの瞳はもう、あの屋敷に居た時とは全く違う___しっかりと意思の炎を宿らせ、力強く輝いて居る。彼は後ろに居た、怯えた様子の妖精達の方を振り向いた。

「皆も、戦え！しもべ妖精の擁護者の為に！ドビーの為に！戦え！戦え！！」

クリーチャーの声に、全員がワァッと活気ついた。もう、恐れた様な表情の妖精は1人も居ない。

「ありがとう__本当にありがとう！こらから、私は先生方に知らせなくてはいけない。貴方達には、お願いする時に知らせが来る様にマグゴナガル先生に頼んでおくから」

Aがそう告げると、妖精達は「まかせて！」「お嬢さん、無理をせずに気を付けて！」と声を掛けてくれた。

ドビーの為にと前に出てくれたウィンキーとクリーチャーにもお礼を告げて、厨房を後にしたAは廊下に人影が無いことを十分に注意しながら杖を振るった。

「エクスペクト・パトローナム___【先生方、ヴォルデモートが此方に向かい始めています。屋敷しもべ妖精達が避難の為に力を貸してくれることを了承してくれました。生徒達を大広間に集めてください】」

フワッと舞い降りたユニコーンに伝言を伝えると、それは一瞬にしてAの前から姿を消した。