白のリコリスが咲く【Harry potter】 (ページ45)

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Aの手を強く掴んだまま、ドラコは城の中をズンズンと進んでいき、気が付くとレイブンクロー寮の前まで来ていた。

「い、痛いわ」

Aがそう告げると、彼はバツが悪そうな表情をしてパッと手を離してくれた__手首が少し赤くなっているのを見て眉を顰めたものの、すぐにまた怒った顔に変わった。

彼が何に対して怒っているのか___それは、バレンタインに彼がカードをくれたのにAが送らなかったことか、もしくは結局は一度もドラコのクィディッチの試合を応援することが出来ていないこと？ここのところ箒の訓練を一緒にしなくなったから自然とドラコとの距離も空いていたからかもしれない___思い当たることがあまりにも多くて少し申し訳なく感じた。

「ドラコ、ごめんなさい。その、貴方に嫌な思いさせたことがたくさんあると思って」

もはや何に対して謝っているか自分でもよくわからなかったが、その一言でドラコは息を吐いて気持ちを切り替えてくれた様だ。

「いや、僕も強く引っ張って悪かった」

彼はチラリ、とAの耳に飾られているピアスを確認するとそれ以上は何も言わずに顔を赤らめて去って行ってしまった。

イースター休暇が明けると、授業がまた一段と難しくなり、約1ヶ月半後に始まる試験に向けての勉強も意識し始めていかなければならなかった。

Aは常にルーナと談話室で勉強を教えあっては互いを高め合っていた。魔法薬草学、魔法薬学、変身術はAの方が得意だが、天文学、呪文学はルーナの方が詳しかった。防衛術に関しては2人ともロックハートの授業がそこまで好きになれなかった為、得意不得意も感じていなかったが。

Aはある日、ペットのクレヴァと散歩をしていると、薄暗い階段の影にジニーの後ろ姿を見つけた。どんなに避けられていようとも、彼女のことはほっといては行けない気がしてならなかったし、ずっと心配だったのだ。

声を掛けるとすぐに何処かに行ってしまうので、出来るだけ気配を消してそっと彼女に近付いた。

ジニーはその場で、一心不乱に黒い手帳に何かを書き込んでいる様だった。しかし、Aがもう一度よく見ようとすると、ジニーが書き込んだ文字がスッと消え、代わりに違う筆跡の文字が手帳に浮かび上がった。

クレヴァがフーフーと毛並みを立て始めたが、見ては行けないものを見てしまったのではないか、と思ったAはジニーに気付かれない様に音も立てずにその場を後にした。