白のリコリスが咲く【Harry potter】 (ページ29)

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ドラコとの箒の特訓は2週間に一度の間隔で行われることとなった。11月からはクィディッチシーズンが始まる為、スリザリンチーム代表を務める彼にはチームの練習も控えていたからだ。

満月が近付くと体調が悪くなってしまうAからも、その頻度の方が好都合だった。

「まずは、〝怖い〟とか〝不安〟とか、先入観を取ることが必要だな」

Aの箒のレベルを確認したドラコはそういうと自身の箒に跨り、手招きしてきた。

「A、ここに乗って」
「え___」

どうやら、2人乗りをする上にAを先頭にするつもりだそうだ。

「ま、待って！それなら、私、後ろがいいわ__」

「操縦するのは僕だし、君は跨ってるだけでいい__合図するまで目を瞑っておけば、怖く無いだろ？」

スケジュールを割いてまで、わざわざ自分に箒を教えてくれているのだから、それ以上拒否する事は失礼だと感じ、意を決して彼の前に身体を滑らせた。

Aが箒に跨ると、落ちない様にとドラコがギュッと抱き締める様な形で後ろから腕を回してきた。

友達とは言え、ここまで異性と身体を密着させることが経験になかったAは思わず恥ずかしさでドキドキしたが、これから飛ぶことを思い出すと、目をギュッと瞑り何も考えない様にした。

「いいか、行くぞ____」

ドラコの合図でフワリ、と箒と共に身体が浮いた感覚があった。しばらく上に浮上すると、『いいぞ』とドラコが合図をしてくれたのでそっと目を開けた。

「わぁ、、！」

そこは、授業で箒から眺めていた景色よりも、レイブンクローの談話室から見える景色よりも、もしかしたら天文学の塔よりも__ずっとずっと上空だった。

「__すごい」

Aはもともと高所恐怖症ではない。

上空での景色と、開放感にAがワクワクしていることを感じると、ドラコも嬉しそうに笑った。

「次は動くぞ___しっかり箒につかまって」

その一声の後すぐに、2人を乗せた箒はくるんと方向を変えて動き出した。

ドラコの箒は授業用よりも遥かに動きが軽く、スイスイと滑らかな動きをしていたが、それは箒の質だけで無くて乗り手のセンスでもある様に感じた。

広場に降り立つとドラコはすぐにAに自分で箒に乗ってみる様に勧めた。

「ドラコ！上がれたわ！！」
「すごいじゃないか！」

ドラコの箒に一緒に乗ったAは以前の様な不安がなくなり、周りに生える木々よりも高い場所まで飛ぶことが出来る様になった。