白のリコリスが咲く【Harry potter】 (ページ25)

今日:15 hit、昨日:23 hit、合計:175,201 hit

21 ページ25

「マダム・ポンフリー！」

ドラコはAをほとんど抱え込む様にして、医務室に駆け込んだ。

「何ですか、騒々しい！」

ドタバタと医務室を開けた彼に、マダム・ポンフリーが眉を吊り上げて注意したが、その腕にいる女子生徒を確認すると、顔を真っ青にさせた。

「まあ！この子は___ミス・グレイディですね__ミスター・マルフォイ、彼女を此方まで運んでください！」

指示されたベッドにAをそっと寝かせると、異常なまでに身体は冷たく、息が荒い__何の症状かは分からないが、発作を起こしていることだけはドラコにもわかった。

マダム・ポンフリーは急いで持ってきた蜂蜜色のトロッとした薬を彼女の口に流し入れた。

「飲み込みなさい」

コクリ、とAがそれを飲み込むと、すぐに顔色が良くなり、荒かった呼吸も整い始めた。

「彼女はどうしたのですか？」

直前まで喋っていたAの急変ぶりにドラコが思わずマダムに尋ねたが、マダムはキッパリと言い切った。

「身体が〝弱い〟のです__これ以上女の子について尋ねるのは不謹慎ですよミスター・マルフォイ___さぁ、大広間で夕食の時間です！行きなさい」

追い出される様にして医務室の扉からドラコがもう一度Aの方を振り向くと、彼女は穏やかな表情で眠りについていた。

Aが目を覚ましたのは、大広間の夕食の時間が終わり、寮の就寝時間が過ぎた頃だった。

ベッドから起き上がると、マダム・ポンフリーがチラリとこちらに気が付き、心配そうな表情で近付いてきてくれた。

「〝体質〟のことはセブルスから聞いていましたが___ここまで悪い事は今までもありましたか？」

どうやらマダム・ポンフリーはAが〝半人狼〟であることを事前に知ってくれていた様だった。

「あの、いいえ__」

Aはこの質問に対して直ぐに首を横に振った。ドラコが近くに居なければどうなっていたのかと思うほど息苦しくなり、目眩がひどかった。
こんな事はこれまでに経験したことがない。

「A、大丈夫ですよ___リーマスの時もそうでしたが__ダンブルドアも、先生方もサポートしてくれますからね」

マダムの口から出てきたその名にAが思わず、彼女の顔をじっと見ると、マダムは寂しげに告げた。

「リーマスと、ロキがどういう形であれ、離れてしまったにしろ__結ばれて貴方が産まれたことを私は誇りに思っていますよ」

それは初めて掛けられた言葉だった。