白のリコリスが咲く【Harry potter】 (ページ1)

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1981年11月___

セブルス・スネイプは、黒いローブを翻し、振り返って自身に視線を送るマグルの間を縫うように足早に進んだ。

___コンコン

一件の古びた煉瓦造りの建物の前で足を止めて、ベルを鳴らしてから数回ノックする。

「はい___」

中からはシスターの服装をした中年の女性が顔を出した。彼女もまた、セブルスの変わった服装に眉を顰めたが、思い出すところがあったのか、すぐに表情を変えた。

「あぁ、お待ちしていました__A・グレイディの保護者の方ですね。なかなかお迎えに上がらないから、心配していたところですよ」

セブルスが訪れたのは、ロンドンにある小さな孤児院だった。彼のかつての友人であるロキが、自分の子を産んだ病院の近くにあるこの孤児院に___我が子を預けたままこの世を去ってしまったのだ。

「そのことですが、シスター__」

口を開きかけたセブルスの視界に、別のシスターに抱かれたAの姿が見えた。

彼女はシスターの腕の中で、スヤスヤと安心したように眠っている___まだ生まれて3ヶ月頃だ。母親と生き別れてしまったなんて、夢にも思っていないだろうに。

「母親は先日、〝事故〟巻き込まれて息を引き取ったのです。誠に申し訳ないのですが、このまま彼女をここで見ていただけますかな」

セブルスを迎え入れたシスター達は衝撃を受けた表情をした。

「でも、しかし___貴方はこの子の〝保護者〟でしょう？貴方が見てあげるわけにはいかないのですか」

「残念ながら、僕は〝後見人〟であって、〝父親〟ではない。母親は未婚なので子どもも認知されていないのです___僕は全寮制の学校で教授を務めているからして、その子の養育を行うことが出来ない」

「まぁ、なんと____」

セブルスの言葉を聞いて、シスター達はそれ以上は追及する事をせず、Aを施設に受け入れる手続きをしてくれた。

「___休暇が取れましたら、都度様子を伺いに参ります」

それだけ言うとセブルスは、サッと玄関を出た。

_____ロキ、君はなんてことを。
　あんな小さな子を残して逝くなんて。

セブルスの頭に、産まれたばかりの子どもを幸せそうに抱いた友人の笑顔が浮かび、離れなかった。