角砂糖３つ分の､【角名倫太郎】 (ページ8)

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08.バス停ページ8

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ミャー。

いつもより遅めの時間に学校を後にした放課後。

バス停で帰りのバスを待っていると、

首に小さな鈴をつけたネコちゃんが足元に寄ってきた。

「あらら。ごめんね。わたし猫アレルギーなの」

言葉の通じないと分かっていても小声でそう謝る。

しかしネコちゃんはそんなのお構い無しのようで。

満足そうな表情で頭をすりすりと寄せてくる。

頭を動かすたびにチリンッと鳴る首元の小さな鈴の音が、
その可愛らしさを表現しているようだった。

「甘えじょうずな子だね」

その愛らしさを私にも分けて下さいな。

なんて考えては少しだけムズムズする鼻を啜る。

定刻時間を過ぎてもバスは来ない。

ふと、誰かの気配を感じて視線を向けると、

「……あっ」

部活帰りなのか銀島くんが一人歩いていた。

じっと視線を送ると、それを感じとったのか彼はおおっ！と
手を挙げてこちらへ向かってきた。

足元にいたはずのネコちゃんは何処かへ行ってしまい居なくなっていた。

「お疲れさん。あーバス待ち？」

バス停と私を交互にみて、制服のシャツの袖を捲りながら聞いてくる。

「うん。銀島くんは今帰り？」

「おん、角名と帰るはずやったんやけど遅いから置いて来た」

「へぇー…」

その名前に思わず眉間にシワを寄せる。

そんな私の表情を見た銀島くんが「なんやその顔」と
頭のてっぺんをチョップしてきた。

痛くはなかったけど反射的に頭を押える。

「ま、お前がおるて知ったらアイツ走って来るやろうけど｣

「？…それどういう、」

意味、と言い終える前に。

銀島くんの背後。視界の隅に入ってきた人物に動きが止まる。

「？どないしてん」

不審に思ったのか、驚いた表情の銀島くん顔を覗いてくる。

「……角名くんいる。女の子と」

「はあっ！？」

指をさしなながらそう言うと彼は勢いよく後ろを振り返った。

視線の先。少し離れたところで、

スマホ片手に気怠そうに笑う角名くんと(たぶん1組の)女の子が歩いていた。