45.スキあり ページ45
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「そういえば俺まだちゃんと好きって言われてないな」
「………えっ｣
あ、と思い出したかのように呟かれて、
ゆっくりと顔を上げると至近距離で目が合った。
確かに春高のとき角名くんに想いを伝えたものの、
ちゃんと『好き』とは言ってなかった。
「い、今ですか」
「だね。せっかくだし」
「…………………」
「張り切ってどーぞ」
いや、どーぞじゃないだろ。
体を離して愉しそうに笑う彼にそう言いたいところだけど、
今の私の心理状態的にそれは難しかった。
だった2文字の言葉だけど、うまく喉元からそれが出てこない。
「ほら、早く」
「〜〜〜ッ」
そんな私をみてニヤニヤと笑ってくる。
まあ清々しいほどに愉しんでらっしゃる。
たまには私だってビックリさせたいし、
その切れ長の目を見開かせてやりたいと思う。
でも、ちょっとした事じゃ角名くんは驚かないだろうし。
すぐに倍で返されてしまうだろう。
なら、いっその事。
私なりにちょっぴり大胆になってみようかと。
角名くんの制服のネクタイを両手でぐいっと引っ張って、
されるがままの細身の体を少し屈ませる。
そして少しだけ背伸びをして。
そのほっぺに軽く触れるだけのキスをした。
「…………すき…です」
小声でそう告げて、ゆっくりとネクタイから手を放す。
照れながら角名くんの顔をみると、
彼は目を見開いたまま放心状態になっていた。
どうだ参ったか。
ふふん、と心の中で勝ち誇ってみる。
けど徐々に自分の言動が恥ずかしくなり非常に反省した。
「もう出よ角名くん！戻った方がいい、絶対…！」
このままじゃ私が居た堪れなくなる。
早口でそう言いながら踵を返した途端、
後ろからぎゅうっと強い力で抱きしめられた。
「んなのどこで覚えてきたの。もー」
肩口あたりから聞こえる珍しく弱めの声。
ぎゅっと強く絡まった腕を見る限り、
どうやらかなり効果があったようだった。
「今の、もっかいやって」
「や、やだよ」
「………ケチ」
「誰がケチだ」
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作者名：. | 作成日時：2020年1月29日 23時
