37.挨拶 ページ37
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途中までは
ここにいる全員が勝てると信じていたと思う。
だけど、そこは全国大会。
烏野の選手一人一人もすごく強かった。
最後、侑くんが治くんに託したボールは烏野1年生の選手2人によって止められて。
跳ね返ったそれを銀島くんが追うも届かなかった。
勝ったのは烏野高校だった。
稲荷崎は優勝候補だったということもあり、
会場内はとてもザワついている。
選手全員が応援席に挨拶をする時、
侑くんの表情はなんだか納得していない様子だった。
悔しいよね侑くん。
誰よりもバレーボール大好きだもんね。
でも本当にかっこよかったよ。本当に。
なぜか上手く言葉が出なくて、
泣くつもりはなかったのに涙が次々と溢れた。
*
応援席を後にして会場前で生徒で集まっていると、
着替えを終えたバレー部全員が現れた。
どうやら、もう一度部員たちから挨拶があるらしい。
悲しいことに私と友人は集団の後ろになってしまい、
その姿を見届けることが叶わなかった。
ただ主将さんの応援に対してのお礼の言葉と、
バレー部全員のお礼をいう声だけはちゃんと聞こえて。
その場にいる全員で大きな拍手を送った。
挨拶が終わって応援に来ていた生徒たちが目的の選手に駆け寄る。
双子は圧倒的人気っぷりで。
どうにも近寄り難い雰囲気だった。
角名くんも誰か大人のひとと会話している。
私と友人はタイミングよくフリーになった銀島くんに駆け寄った。
すると彼は私たちの姿を見た途端、
目元を手で隠しては小さく肩を震わせた。
「ああっ、あかんてギンジー」
「ぎんじまくーーん」
見事にもらい泣きしてボロボロと涙を流す。
もう顔も情緒もぐちゃぐちゃだ。
よしよしと銀島くんの頭や背中を優しくさする。
「お前ら俺のオカンか」
「ふはっ」「ふふっ」
か細く聞こえたツッコミに思わず吹き出す。
それにつられて笑顔になった銀島くんを見て笑っていると、
背後からそっと優しく両肩を掴まれた。
ビクッとしながら後ろを振り返ると、
「お疲れさま」
優しく微笑んだ角名くんが後ろに立っていた。
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作者名：. | 作成日時：2020年1月29日 23時
