解せない ページ7
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すぐそばのソファに腰を下ろした亮ちゃんが、机に転がっていたゲーム機を起動させながら口を開いた。
錦「章ちゃん、陽派にとっちゃあ反逆者やねん」
大「・・・・・」
錦「いろんなデータ根こそぎ盗んで、陰派に転がり込んできてんな。
非道な実験ばっか繰り返す陽派の理念には賛成できひんかって、その言動が問題視されて拘束されかけたところを逃げ延びたらしい」
安「だから俺、WANTEDって張り出されてるみたいやねんなあ。指名手配ってやつよ〜」
なるほど。
だから滅多なことでは外出しないんや。
奇天烈思考な天才科学者とはいえ、
地下にこもりっぱなしで出歩くこともなくて
なんやここに幽閉されとるみたいやなあとは思ってたけど、ある意味間違ってなかったってこと。
安「じゃ、もうちょっとそのまま力抜いててなあ」
ヤスって、いっつもおだやかでニコニコしとるけど。
ちょっと前まで凡々人やった俺なんか想像もできひんくらい壮絶な人生送ってきとるし、つらいこととか苦しいこととかいっぱいあったはずやのに、なんでこんなに他人にやさしくできるんやろ?
俺やったらとっくの前にやさぐれてる、きっと。
今はなんというか、Aさんや亮ちゃんという究極の個性が周囲をガチガチに固め過ぎてて、俺は結局変わらず凡人に留まっているけども。
安「逆やな。おれの場合はたぶん、苦しい思いしたし、苦しい思いを
考えてたことが口から出ていたのか、ヤスは相変わらずの手際で止血をしながら、答えた。
安「それに他人やなくて、家族やしなあ」
俺にはまだ、解せへん。
人生を憎んで尚、だれかのために生きようと足掻き続けられること。
大「家族、か・・・」
ふと思い出した。
オカンたち、元気にしてるんかな。
安「・・・おーくらには、今でも帰りを待っててくれてる場所が他にあるんやもんな」
大「へ」
安「ふふ、独り言よ〜」
そう言って笑うヤスの顔、ちょっとだけ寂しそうに見えたのは気のせいやろうか。
・・・たぶん、気のせいやない。
大「・・・あの、ヤスのほんまの家族って」
安「さあねえ・・・おれを売った金で、どっかで悠々自適に暮らしてるんやないかなあ」
俺はまだ、黒陽のひとたちのことをすべて知ったわけじゃないし、言ったらきっと知らんことのほうが多いし、分かり合えることも少ないのかもしれへんけど。
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べに(プロフ) - ゆうみさん» ゆうみさん、コメントありがとうございます!わああとってもうれしいです、励みになります!(;;)お話はまだまだ続くので、頑張って更新していきますね! (2020年7月2日 1時) (レス) id: e3692f9d07 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ(プロフ) - とっても面白いです!シリアスなのにコメディタッチで、とっても読みやすいしとにかく物語に引き込まれました!一気に読み進めて続きが楽しみです!更新頑張ってください♪ (2020年6月30日 21時) (レス) id: bea5fb83fd (このIDを非表示/違反報告)
べに(プロフ) - ココナッツさん» わーーんめちゃくちゃうれしいですうう(;;)ありがとうございますなのです!(エルちゃん風) (2020年6月22日 21時) (レス) id: e3692f9d07 (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - べにさんお疲れ様です!私個人の意見ですが、もうこれは無料で読めるアプリの域を超えているような素晴らしさなのです(エルちゃん風) (2020年6月21日 8時) (レス) id: 5d604581ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:べに | 作成日時:2020年5月22日 21時