よーいスタート!! ページ43
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マルの「よーいスタート!」ってはしゃいだ声を合図に、Aさんが容赦ない勢いで切りかかってきた。
大「おわっ」
すんでのところで受け止める。
キン!と高い音が跳ねて、腕がビリ、と痺れる。
ちょっ、マジかこの人!
さっと後退したAさんが双剣使いさながらの軽やかさで胴を薙ぎにきて、これまた寸前でどうにか受け止めたけど。
大「な、なんかAさんて、得意武器やなくても充分強いよな・・・?」
「大したことないのです。わたしは生まれて間もない頃から影として生きる術を叩き込まれてきただけなのです」
鍔迫り合う刃がキリキリと軋む。
一瞬間合いが取れたかと思いきや、
俺が切り返す前に刀を逆手に持ち替えたAさんが突きにくるから、慌ててそれを避けて、連続攻撃を浴びてしまう前に後ろへ退いた。
「逃げてばっかじゃだめなのです。やらなきゃやられるのです」
大「わ、わかってるっ」
「遠慮をしなくても平気なのです。
ここで怪我をするほどわたしはヤワじゃないのです、全力で切り掛かってきて欲しいのです」
すると突然、Aさんの雰囲気がガラッと変わったような気がした。
なにこれ・・・?
風に乗ってふわりと甘い香りが漂ってくる。
背筋にゾクっと悪寒が走って、
次の瞬間ドクン!と。
翡翠丸を握る手に奇妙な感覚が迸る。
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丸「・・・坊や、なんや妙な物に憑かれましたねえ」
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ふっと抜けるように、突然軽くなったからだ。
俺は跳ねるように間合いを詰めて、Aさんに切りかかった。
ギッと耳障りな音がして、その瞬間、彼女がにやりと意味深に微笑んだ。
その意気なのです、と――――翡翠丸を弾いて薙ぎ払いにくるその刀を、俺は的確に受け止め、そして攻撃をしかける。
得物と得物がせめぎ合う。
角の立った金属音が夏空の下に響いて、蝉の鳴き声に重なる。
なにこれ、
・・・めっちゃ楽しい・・・!
夏バテはいったいどこに飛んでいったのやら。
思い描くとおりに次から次へとからだが動いて、Aさんの攻撃も、そりゃあ楽々余裕ってわけにはいかへんけど、ある程度読めて対応できる。
翡翠丸ってこんなに軽かったっけ。
それに、まるで体重が半分になったみたいに全身が楽に動くから、アクロバティックな動きにもついてこれるん。
なんか・・・俺、前回からいきなり進化したっ?
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べに(プロフ) - ゆうみさん» ゆうみさん、コメントありがとうございます!わああとってもうれしいです、励みになります!(;;)お話はまだまだ続くので、頑張って更新していきますね! (2020年7月2日 1時) (レス) id: e3692f9d07 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ(プロフ) - とっても面白いです!シリアスなのにコメディタッチで、とっても読みやすいしとにかく物語に引き込まれました!一気に読み進めて続きが楽しみです!更新頑張ってください♪ (2020年6月30日 21時) (レス) id: bea5fb83fd (このIDを非表示/違反報告)
べに(プロフ) - ココナッツさん» わーーんめちゃくちゃうれしいですうう(;;)ありがとうございますなのです!(エルちゃん風) (2020年6月22日 21時) (レス) id: e3692f9d07 (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - べにさんお疲れ様です!私個人の意見ですが、もうこれは無料で読めるアプリの域を超えているような素晴らしさなのです(エルちゃん風) (2020年6月21日 8時) (レス) id: 5d604581ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:べに | 作成日時:2020年5月22日 21時