言わないで ページ31
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安「Aには・・・なんていうか、持病のようなものがあって」
大「持病？」
安「あ、や、えっと。命に関わるようなもんじゃないんよ？ただちょっと気をつけなあかんだけで。
やから大丈夫。オロチには何もされとらんよ」
それをきいてホッとした。
スースーいうてるAさんの表情はたしかにやわらかくて、すり傷や打撲は負ったけど、この点滴は無関係なんやって。
・・・毒とかそういうのやなくてよかった。
今日の俺は完全に足手まといやったし、アシストするどころか護ってもらってばっかりで――――
安「・・・おーくらはやさしいなあ」
ヤスは言った。
いつも以上におだやかな目で、まなじりにそっとしわを寄せている。
大「な・・・べつにそんなことない、けど」
安「ふふ」
何もかもわかってるように微笑まれると恥ずかしくって、照れ隠しで丸めたティッシュを鼻に突っ込む。
もう鼻血はほとんど止まっとるけど、口の中には独特の鉄臭さが広がっていた。
ヤスが棚からマグカップを取り出す。
あ、ここではビーカーやないんやな・・・と
いつもラボで出される実験器具入りの飲みもんを思い出していたら、
安「そんなやさしいおーくらにお願いがあるん」
大「？」
ヤスは淹れたコーヒーを運んできて・・・それで。
安「もしかしたら、もうよこちょに言われたかもしれへんけど。
あのな、もしもAが今日倒れた後のこと何か訊いてきたら・・・何もなかったことにしといてほしいん」
大「え？」
安「おねがい」
そう言うひとみが切実で、俺はどきっとする。
倒れた後のことってその、保健室でのこと？
たぶん、俺は『なんでなん？』て顔をしてたんやろうけど、ヤスはそれ以上は説明してくれへんみたいで、すっと目を逸らしてしまった。
安「ごめん。・・・お願いしてもいい？」
そんなふうに言われたら
ただ黙ってうなずくしかなくて。
ありがとうと言って笑うヤスがすこし哀しそうに見えるのは、どうしてなんやろう。
こういうとき、俺はわからなくなる。
知りたい？
知らなくていいことは、知らんままでいい？
ここではまだ右も左も判別できひん自分。
家族、仲間・・・少しずつ理解しているつもりでも、
俺はほんとうに黒陽のみんなのことを何もわかってない。
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べに(プロフ) - ゆうみさん» ゆうみさん、コメントありがとうございます！わああとってもうれしいです、励みになります！(；；)お話はまだまだ続くので、頑張って更新していきますね！ (2020年7月2日 1時) (
レス) id: e3692f9d07 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ(プロフ) - とっても面白いです！シリアスなのにコメディタッチで、とっても読みやすいしとにかく物語に引き込まれました！一気に読み進めて続きが楽しみです！更新頑張ってください♪ (2020年6月30日 21時) (レス) id: bea5fb83fd (このIDを非表示/違反報告)
べに(プロフ) - ココナッツさん» わーーんめちゃくちゃうれしいですうう(；；)ありがとうございますなのです！(エルちゃん風) (2020年6月22日 21時) (レス) id: e3692f9d07 (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - べにさんお疲れ様です！私個人の意見ですが、もうこれは無料で読めるアプリの域を超えているような素晴らしさなのです(エルちゃん風) (2020年6月21日 8時) (レス) id: 5d604581ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べに
| 作成日時：2020年5月22日 21時
