雫

5粒。 ページ5

ん、なんて無愛想に渡されたのはチョコだった。
こんなのどこで…



職員のを盗んだか、研究者かもしくは警備員か。
とにかく、甘いお菓子は滅多に食べられるもんじゃない。
薬のせいでろくに年頃らしい物も食べられないからあたしの体は何となくスマートになるしかなかった。



骨と皮、とかではないからまぁ今以上の食事も望みはしない。



｢くれるの？｣


『手錠、取ってくれたからな』


｢…ふふ、ありがと｣



関わってみればそんなに悪い人でもないのかも。
顔だって基準が分からないから何とも言えないけど、確実にブスではないし。
背も高いし…



いつか読んだ少女漫画でのイケメンキャラの条件は揃っている。
名前負けしていない。



『Aはさ。外行きたいと思わんの』


｢んー…別にって感じ｣


『つまらんく、ないん』



眉毛をひょいと上げてあたしを覗いてきた。
やけに手首の跡が赤く見えた。
痛々しくて、目を逸らす。



｢もうこれが当たり前だから。ここに来る前の記憶もあんまないの｣



あぁ、もうすぐライフルームの時間。



『出てみよや、夜』


｢また捕まるだけだよ｣


『夜は出ても何も言われんねん。害無いから』



害。
職員、研究者、警備員が揃って言う｢害｣とは



｢あぁ…ないもんね、タイヨウ｣



世界を照らす太陽。

6粒。→←4粒。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す