花散る前に雪よ舞え【太宰治】

8.理性 ページ9

太宰side






久しぶりに寝ていると寝室の扉が少し開いた







それと同時に入ってきたのは車椅子に乗らずに壁を頼りにゆっくり歩いているA









何しに来たの？


普通に考えて勝手に寝室には入ってこないだろう？



それも男の部屋








すると床で手探りに何かを探している様子のA







何か探してる？






まあ、面白いから寝た振りでもしておこう



目は開けとくけど




そう決めたのと同時にひょこっとベットに顔を出したA








そして不安定ながらも立ち上がり何度も壁に身体をぶつけながら何処か行ってしまった







なんか危なっかしい








何時も車椅子なしだったら付き添う人がいないと歩けないのに




しかもあんなに細くて

本当に何時か倒れてしまいそう









すると何やら持ってきたA






…掛け布団？







｢よかった…｣









私に掛け布団を掛けてそう云いながら笑ったA






私はこの笑顔に気が狂わされる



何故かってぐらい私にも判る





だから、Aには笑うと雪が舞うという異能力を言い訳に辞めるように云っている








誰よりも其の笑顔が好きなのだけど







だからこそ他の人には見られたくない



私の前だけで笑ってくれたらいいのに











私に掛け布団をかけるやいなや帰ろうとしたA
私は上半身を起き上がらせてAの手首を掴んだ









｢え？！｣






私に引っ張られたAはベットに倒れ込んだ






｢だ、太宰さん？！｣









私はAに馬乗り状態








俗に言う床ドン？
否、ベットドンか








｢夜中に男の部屋に入る
どう云う意味か判るかい？｣








其の時
自分の何かが切れた





これが理性という奴？

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