花散る前に雪よ舞え【太宰治】

34.行方 ページ35

Asaid







「あれ？なんか、変わってる…？」









「ああ、Aちゃん！大丈夫だった？」









探偵社に着くと居たのは敦くん









「大丈夫…ってなにが？」








心配されるような事に覚えがない









「なんか数日前、乱歩さんと殺人事件の応援に行った時の帰りに
Aちゃん来てませんけどどうしたんですか？
って聞いたら太宰さんが云ってたよ？
私の愛の告白に気絶したって」









「え？！」







矢っ張り、倒れたんだ

乱歩さんの応援なんて知らなかったししかも数日前…

若しかしたら数日間寝てた？！

それに愛の告白って…







「私、いつ頃から休んでた？」








「二日間ぐらいだから一昨日、かな」








「二日間も？！」






無断で二日間も休むって…








「大丈夫だと思うよ、襲撃されたりして色々と大変だったしAちゃんが危険な目に合わなくてよかったから」





敦くんはニコニコと笑った



なんて優しいんだ…！







「そう云えば太宰さん知らない？」









「え？太宰さん？
家には居なかったけど…」









「そっか、ありがとう」









「来てないの？」









「うん、そうなんだよね」






私は何時ものサボりとは違う少し嫌な予感がした








「国木田さんも知りませんか？
太宰さんが行方不明なんです」









「太宰が行方不明ぃ？」









「電話も繋がりませんし
下宿にも帰ってないようで」









「あ、そう云えば」






すると賢治くんが口を開いた








「昨日、何処か行ってましたよ？
国木田君には内緒ねと云いながら抜け出してましたけど…
お菓子屋に行くとか云ってました」









お菓子屋…？







「太宰がか？
柄に合わんな」









「そうですよね
何でも人気のお店みたいでシュークリームが目当てだったとか」









シュークリーム…？




って私、さっき食べたよね？！





若しかして…






「本当に太宰も大好きだよね」




乱歩さんがそう云うと同時に私を見据えて笑った





「何をです？」






「シュークリーム」







乱歩さんはクスクスと笑った




もしや乱歩さん…





全部知ってる？








「まあ、太宰さんの事だ
また川だろ」







「また土中では？」







「また拘置所でしょ」




川に土中、それに拘置所…か



でも、矢っ張り
少し嫌な予感がする

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