花散る前に雪よ舞え【太宰治】

33.吉夢 ページ34

Asaid







「ん…
あれ？」






重い瞼を開けると気がついた




寝ていたのか、私は







「じゃあ夜のは…夢？」







若しかして昨晩の事はすべて夢で無かったこと？








「あ…」





私には太宰さんの毛布が掛かっていた







「良かった…」






夢じゃなかった





きっと太宰さんが掛けてくれたんだ




そんな優しさに少しじんみりとした





でも、そうなると私は昨晩








「返事をする前に…倒れた？」






そう云えば、なんか血の引く感覚を覚えている







「はあ…」





また、太宰さんに迷惑をかけてしまった





そして、凄く悔しいというかなんというか





あのままだったら付き合えてた……かもしれなかったのに







「んー、タイミング逃し過ぎだ」






私は寝室を出た






「なんかあるかな」





私は出来る限り車椅子から背伸びをした









「シュークリームだ！」








私は皿にのったシュークリームを手に取った







「でも…私買ってない」







太宰さんのかな



でも、これ私が食べたいって云ってた店の美味しいシュークリーム





この前は行列で食べれなかったんだよね







「食べても…いいのかな」








すると皿の裏ににメモが貼ってあることに気がついた









「依頼の報酬…か！」







そこに書いてあったのは

前、依頼の時に貰ったやつ
腐ってるかもしれないけど勝手に食べといて

との文字








「腐ってる…？」





でも見た目は凄く美味しそう







「有難く貰おう」





私はシュークリームを頬張った









「美味しい…！」







今夜、御礼を云おう


そんなことを私は美味しいシュークリームを食べながら考えていた









でも、其の夜太宰さんは帰ってこなかった

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