どんな君も大好きだ。

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『ライブを観るのは明日が初めてだけど、ずっとCDとかDVDで政人の声を聴いてたし、曲も全部知ってるよ』




『私、政人と付き合ってる頃はバンドの良さ分からなかった。
休みの日はライブしに行って、私は政人と一緒に居たかったのにいつも取り残されてた。
バンドやめてほしかった』




『でも、大人になってからやっと、政人が目指してたことに気づいた。
政人が創る音楽ってすごいね。
バンドってすごいよ！』









僕は涙が止まらなくて、全く喋れそうにない。


Aへの申し訳ない気持ちと、ありがたい気持ち。


２つの想いが混在して訳が分からなくなっていた。








『ちょっと政人、そろそろ泣き止んでって笑
目が腫れちゃうでしょ？
王子様がそんなメソメソしてて良いんですかー？』


「うるせぇ.....」


『政人って弱ったときにすぐ泣いちゃうよねー
昔と変わってないよ。
そんなところが可愛くて好きだった笑』









Aはムカつくところもあるけど、
いい奴なんだよ。
こうやって優しいところも、昔と変わってない。









「ありがとう。
なんかさ、Aの声聞いたらちょっと元気になった気がする」


『いいのいいの笑
もう落ち着いた？大丈夫？』


「うん、大丈夫。本当にありがとう。
ねえ明日さ、A席どの辺り？」


『ん？確かね、1階の真正面の3列目辺りだったと思うけど』


「よし分かった。覚えた」


『へ？』


「明日、絶対A見つけるから。
目があったら合図しろよ？」









自分でも何を言っているのかよく分からない。
いくら大体の席の場所を教わっても、1万人の大観衆の中からAを見つけ出すことができるのか。


でもね、できる気がするんだ。



だって君はきっと、昔と変わらないあの笑顔で
こっちを見ていてくれるんでしょう？









『了解！絶対見つけてね！』


「任せとけ」


『明日は泣いたらダメだよ』


「泣かねーよ！絶対泣かない」


『言ったね。見とくからね？
もし政人が歌えなくなっちゃったら、代わりに私が歌うから』


「はいはい分かりました。笑
じゃあ、僕はそろそろ寝ます」


『はーい。私も寝るね、おやすみなさい！』









Aとの電話を切る。



寝よう。



伝えたい言葉を身体中に詰め込んで、武道館に持って行こう。



Aにも届きますように。
あの頃と同じように笑ってくれますように。








音楽の楽園へ向かう準備は万端だ。

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