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「…え?」

『……あれ?』


言い切った後で、ハッと我に返った。

…私はいま何を言った?

降谷さんの青い瞳が揺れている。

頭は数秒前の出来事を繰り返していた。


言ってしまった。ずっと隠していた想いを。

どう足掻いてももうあとには引けない。

ゴクリと唾を飲み込む。

私は彼の目をまっすぐに見据えて、もう一度はっきり口にした。


『降谷さんのことが好きです』


痛いくらいの沈黙が降りる。

心臓だけはうるさかったけれど、目は逸らさなかった。

そうしないと、きっと本気だってわかってもらえない。

息まで止めてしまいそうだった。

見つめあったままの時間が永遠にも感じられた。


やがて降谷さんは、感情の読めない瞳を伏せて口を開いた。

その声は、真夜中の部屋の中に静かに響いた。



「…ごめん」

『……っ』


目は合わない。

彼は私の方を見ないままで続ける。


「君の気持ちには応えられない」


二人称がいつもと違う。

距離を取られたことには嫌でも気がついた。


「Aをそういう風に見たことはないし、これからもその気はない。
俺は12も上なんだぞ。もっとましな奴を探せ」

『そんな…!』

「Aならきっと、これからの人生でもっと良い人に出会えるよ」

『…っ降谷さん、私は、』

「勘違いさせたなら悪かった」

『……っ!』


グッと唇を噛んだ。

言葉のひとつひとつが心臓に突き刺さる。

今日できた火傷なんかよりずっと痛い。

降谷さんは、躊躇いがちに足を踏み出して私の横を通り過ぎた。


「…明日はゆっくり休めよ、おやすみ」


背後でドアの閉まる音が聞こえる。

完全に人の気配がなくなってから、冷たい床に崩れ落ちた。


なにやってるんだろう。

降谷さんの瞳の中に浮かんでいたあれは、あの色は、どう見たって困惑だった。

あの人は真面目だから、きっと困らせてしまっただろう。

ただでさえ今日は散々迷惑かけたっていうのに。あぁもう…!


自分で自分の太ももに拳を落とす。

髪はとっくに乾いたはずなのに、雫がパタリと床に落ちた。

33:フロランタン→←31



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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
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紅个 - 面白いです! 頑張ってください。 (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
紅狐 - ◎ (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
紅湖 - 面白い (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
カルビ(プロフ) - はい!降谷さん格好よく書けてます!!大好きです!!良かったらボードで話しませんか?降谷さん語りましょう!! (2019年4月8日 16時) (レス) id: 36c4c5cb96 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 1さん» ありがとうございますー!続編でも頑張りますね!よろしくお願いします! (2019年4月5日 21時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:立夏 | 作成日時:2019年3月3日 21時

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