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床に転がされ呻いたのはどう見たって誘拐犯の1人だ。恐らく瀕死にされたのはこいつだけじゃない。

隣で男が息を飲んだのがわかった。

感情のこもっていないような冷たい声が、いつも聞いていたはずなのに初めて聞くようなその声だけが、気味の悪いくらい綺麗に響く。


「あぁ、抵抗なんてものはしない方がいいですよ──今の僕はすこぶる機嫌が悪い」

「誰だてめえ…」

「迎えに来ただけです。返してもらいましょうか」


月が顔を出して、彼を照らし出す。

瑠璃色のブローチが淡く光る。

その瞳は、まるでガラス玉のように透明で、凍てついていて。

私はこの目を知ってる。そうだ、あの日に見た。私は彼に会った。真夜中の私の部屋で。


月明かりのせいで彼も私たちのことがよく見えるようになったのだろう。

視線が私に向いて、そして引き裂かれた私のシャツに動いた。

その瞬間、私にもわかるくらいに一気に彼の殺気が増した。

男が怯えるように後ずさる。降谷さんは、射抜くような鋭い目を彼に向けた。


「…その子に何をした」

「な、なにもしてない!服を破いただけだ!」


降谷さんは目を細めて息を吐く。

なぜ吐息1つでさえこんなにも凍りそうなのだろうか。

拳を握った彼は、地を這うような低い声で告げた。



「ふざけるな」


睨まれていない私まで背筋が凍った。

黒いアタッシュケースが乱暴に投げられる。

ロックが開いて、中から札束が溢れ出た。


1歩、降谷さんが私の方へ歩を進める。


「動くな!こいつが死ぬぞ!」

『い…っ!』


髪を引っ張られて首にナイフを当てられ、思わず顔を歪めた。

それなのに、降谷さんは歩みを止めない。


「それ以上近寄ったら本気で…!」

「今すぐ手を離せ」

「おい!」

「聞こえなかったか?離せと言ったんだ」


男の手は震えている。

ナイフの切っ先が私の肌を食い破る直前まで近づけられる。


『…っふるや、さん』


掠れた声はきっと、彼には聞こえていた。

冷え切っていたラピスラズリの瞳に、ほんの少しなにかが滲んだ気がして。そして。



瞬きをした一瞬で、全てが終わっていた。

割れた窓から夜風が吹き込む。

なにかが外の地面に叩きつけられた音がして、それがあの男だろうと数秒してから気がついた。

音から判断するに下はコンクリートじゃない。死にはしないだろう。


は、と口から息が漏れる。


「──っA!!」


私の名前を呼んだ彼の瞳は、いつもと同じ深い碧だった。

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設定キーワード:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
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カルビ(プロフ) - はい!降谷さん格好よく書けてます!!大好きです!!良かったらボードで話しませんか?降谷さん語りましょう!! (4月8日 16時) (レス) id: 36c4c5cb96 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 1さん» ありがとうございますー!続編でも頑張りますね!よろしくお願いします! (4月5日 21時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
1 - すっっっっっごいきゅんきゅんします!毎日楽しみにしてます。応援してます! (4月5日 6時) (レス) id: 1e43368747 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 泉夜 綴禮@tudureさん» わ〜!神作だなんてありがとうございます!!評価まで押して頂けてとっても嬉しいです!これからも精進できるよう頑張りますね!! (4月4日 20時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
泉夜 綴禮@tudure - これは神作ですね!一番右の星不回避です('-' (4月4日 19時) (レス) id: 4933786ec3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:立夏 | 作成日時:2019年3月3日 21時

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