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『私の目を見て!』


大丈夫だ。怖くない。だって降谷さんだ。

無理やり彼の視線を絡めとって、逸らさないように息まで止めてその目を見つめる。


『大丈夫です、ここにはなにもないです、だから…っ』

「………」


どうすればいいのかなんて模範解答はわからない。

テストじゃ間違いのない答えを書けるのに。今は、体が動くままにするしかなかった。


徐々に彼の瞳に熱が戻る。

1度だけゆっくりと瞼が上下して、いつもの温かい碧が浮かんだ。

次の瞬間、ふっと息が切れたように彼の体から力が抜け、私の方へと倒れ込んできた。


『うわあ!?』


それなりに大きな音を立てて2人揃って倒れ込む。

私がフローリングに後頭部を打つ直前に、彼が私の頭を抱え込んだ。

必然的に抱きしめられるような、押し倒されるような体勢になって、熱っぽい息が耳にかかる。

そんな場合じゃないなんてわかってはいても、心拍数は自然と上がった。


『ふ、降谷さん、大丈夫で』

「…ごめん」

『へ?あ、いえ…』

「すぐ立つから…ちょっとだけ、許して」

『……はい』


う、重い…

高熱が出ているだろう体には私の体温が気持ちいいのだろうか。

無意識なのかわからないけれど、首元に擦り寄られてサラサラの髪がくすぐったい。

その淡黄色の頭に手を伸ばして、いつも彼がしてくれるように優しく撫でた。


少しずつ、降谷さんの呼吸が落ち着くのがわかった。

やがて彼はふらつきながらも起き上がる。

伝染ったように火照ってしまった頬を隠しながら、再び彼を支えてベッドまで運んだ。


とりあえずお水…!

降谷さんが横になったのを確認してから、キッチンでコップに水を注ぎ、タオルを濡らす。

そして急いで彼の元まで戻った。


『あの、解毒剤とかは…っ』

「いや…いい、大したことはないから、少し寝れば…」

『わかりました、水飲めますか…?』


体を少し起こした降谷さんに水を飲ませて、額の汗を拭う。

多分、ここに来る前に例の組織の任務があったのだろう。

そこで毒を盛られて、なんとかここまで来たってことか…


自分の服に血がついていて、ぎょっとして彼の体を見れば、腕に銃弾が掠ったような傷があった。

相変わらず私の住んでいる世界とはまるで違う場所にいるのだと思い知らされる。


…降谷さんの、役に立てたらって、思ってたはずなのに。

私はまるでなにもできていない。


ため息をついて、寝ている彼を起こさないようにしながら腕の手当てを始めた。

18→←16:ザッハトルテ



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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
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紅个 - 面白いです! 頑張ってください。 (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
紅狐 - ◎ (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
紅湖 - 面白い (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
カルビ(プロフ) - はい!降谷さん格好よく書けてます!!大好きです!!良かったらボードで話しませんか?降谷さん語りましょう!! (2019年4月8日 16時) (レス) id: 36c4c5cb96 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 1さん» ありがとうございますー!続編でも頑張りますね!よろしくお願いします! (2019年4月5日 21時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:立夏 | 作成日時:2019年3月3日 21時

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