16:ザッハトルテ ページ17
深夜と言っても差し支えのない時間帯。
暗い自室の中にタイピング音だけが響く。
最後にエンターキーを叩き、ようやく息をついた。
とある組織にコンピューターウイルスを送り込んだのだ。肩を回しながらチョコレートを頬張る。
つっかれた…降谷さん、今夜はうちに来るって言ってたのになかなか来ないなぁ。
待ってる間に仕事が1つ片付いてしまったではないか。約束をすっぽかされるのはもう慣れたけど。
携帯を確認しても連絡はなし。
今日は来ないのかもしれない。
もういい時間だし、待たずに寝ちゃおうかな、なんて考えながら伸びをする。
そんな時だった。
突然ガチャリと部屋の鍵が開く音がした。
え!?な、だ、誰!?降谷さん!?
彼は一応合鍵(無許可)は持っているけれど、それはあくまで緊急時用で普段はちゃんとインターホンを鳴らす。
鍵が開いた直後に乱暴に扉が開けられる。
思わず身を固まらせていたが、誰かが倒れ込むような音が聞こえて慌てて廊下へ飛び出した。
『な…っ!降谷さん!』
そこにはいつもと少し雰囲気の違う服を纏った降谷さんがいた。
玄関に倒れていた彼は、私の声に顔を上げる。
その表情は辛そうに歪んでいて、パタリと汗が床に落ちた。
「…っ悪い、軽く、薬…盛られて、」
『くす…っ!?た、立てますか?!せめてソファまで…!』
明らかに苦しそうな彼の息を聞きながら体を支えようとする。
非力な私の支えなんてあってもないようなものだろうけど、それでも降谷さんはなんとか立ってくれた。
異様に熱い体温。青いブローチが目の前で光る。
足を踏み出そうとしたその時、ガタンとドアの外で物音が鳴った。
「…っ!」
今の音はお隣さんが帰ってきただけだ。
それなのに、降谷さんはバッとドアの方を振り返った。
いきなりのその行動に転びそうになりながらも、なんとか堪えて彼の顔を見る。
…見て、思わず息を飲んだ。
『ふるや、さん…?』
今まで見たことのないような瞳だった。
凍りつくなんてものではない、心臓ごと止まってしまいそうな鋭い目。
いつも見ていたあの優しい碧とは違った、冷たさと警戒で染まった銀灰色。
だれ…?
彼は多分、降谷さんじゃない。
そうだ、工藤から1度聞いた。黒いベストに青い宝石のブローチ。
組織の一員である彼の名前は───…
『…降谷さんっ!!』
自分の考えを断ち切り、彼の頬に手を添えて強引に私の方を向かせた。
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紅个 - 面白いです! 頑張ってください。 (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
紅狐 - ◎ (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
紅湖 - 面白い (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
カルビ(プロフ) - はい!降谷さん格好よく書けてます!!大好きです!!良かったらボードで話しませんか?降谷さん語りましょう!! (2019年4月8日 16時) (レス) id: 36c4c5cb96 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 1さん» ありがとうございますー!続編でも頑張りますね!よろしくお願いします! (2019年4月5日 21時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2019年3月3日 21時