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桜色の唇がとんがる。

一気に冷え込んだ空気に、流石に年頃の女の子に軽々しく聞くことじゃなかったと心の中で反省した。


「わ、悪かったよ…」

『あーあ、降谷さんにだけは言われたくなかったなぁ』

「え?そりゃ俺だって独り身だけど」

『そういう意味じゃないです』


ため息をついたAはベンチから立ち上がる。

そして俺に背中を向けたままで続けた。


『作るわけないじゃないですか。
本当に好きな人と以外は付き合う気なんてないです』

「…へえ」


なんていうか、意外と考えてたんだな、と思った。

振り返った彼女の表情はやっぱり不機嫌そうで。

またしてもプイッと顔を背けられてしまった。


『いいんですよ、どうせ一生独身ですよ、私は生涯仕事に生きるんです』

「仕事って…そういえばAは将来したいこととかあるのか?」

『い、いや…それは…決めてないですけど』


まぁAなら日本一の大学だって余裕で受かるだろうし、就きたい職業に就けるとは思うけど。

でも公安の協力者をやめられると痛手が大きいなと思いながら返す。


「お前公安に来ないのか?」

『来てほしいですか?』

「そりゃAが来ればかなり助かるだろうけど」


迷いなくそう言えるくらいにAの才能は群を抜いてる。

Aは目を瞬かせて、表情を緩めた。…あ、機嫌ちょっと直ったな。


『どうしようかなぁ。私、運動苦手だから警察官には向かないと思いますけど』

そう言って軽く笑う。随分楽しそうな笑顔だ。


『ま、どちらにせよ協力者はやめないですよ、降谷さんが公安を辞めるまでは』

「…助かるよ」

『ふふ、助けますよ、あなたが言ってくれればいつだって』


彼女の背後で桜の花びらが舞った。

いつもより少し短い青のプリーツスカートが揺れる。

綺麗な黒髪が春風になびいた。


『…だからちゃんと、頼ってくださいね』

「え…?」


小さな声で紡がれた言葉に、体が固まる。

頼ってるよ、と返そうとしたけれど、浮かべられた微笑みにそのセリフは引っ込んでしまった。

彼女はもうそれ以上なにも言う気はないようで、再び俺に背を向ける。

桜の花びらを捕まえて笑ったAは、もうすっかりいつもと変わらない彼女だった。

11:プディング→←09:マシュマロ



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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
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紅个 - 面白いです! 頑張ってください。 (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
紅狐 - ◎ (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
紅湖 - 面白い (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
カルビ(プロフ) - はい!降谷さん格好よく書けてます!!大好きです!!良かったらボードで話しませんか?降谷さん語りましょう!! (2019年4月8日 16時) (レス) id: 36c4c5cb96 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 1さん» ありがとうございますー!続編でも頑張りますね!よろしくお願いします! (2019年4月5日 21時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:立夏 | 作成日時:2019年3月3日 21時

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