069:クロッカス ページ24
Aside
「これより突入を開始する。
──全員、なにがあっても死ぬなよ」
そんな降谷さんの声が聞こえて、組織壊滅作戦は最後の締めにかかった。
コナンくん…工藤新一くんは本当にすごい子である。実年齢でもまだ高校生なのに。
彼を中心に世界中の捜査官が集まった。
彼は驚くほど完璧に先を読み、その見事な手腕で組織のコードネーム持ち達を都内のビルに閉じ込めてしまった。
本庁からそう遠くない埠頭にある廃ビルだ。
もちろん人払いは済ませているし、そもそも今は午前3時。真夜中である。元々さびれたそこに来る人なんていないだろう。
そんな中、私は何年ぶりかに警視庁公安部のオフィスにいた。
私も現場に行くと言ったのだが、近くは危ないしお前は協力者だし、安全なところで後援してくれと言われた。
確かに私があの場にいても出来ることはない。
というわけで、私はここで監視カメラの映像を確認しながら降谷さんにルートを伝えていた。
公安警察は当然現場に出払っていて、今いるのは私と、警察官時代の後輩くんだけである。
「…うまくいってるようですね」
『そうね、ちょっと怖いくらい…』
緊張の走る声でそう言った彼に頷く。
世界屈指の捜査官たちが一堂に会しているのだ。
作戦はかなりうまく進んでいる。
もう既に半数ほど捕らえていた。
ふぅ…と息をつく。
そして少し埃のかぶったデスクに座った。
私が公安警察だった時に使っていたデスクである。
片付けてくれてよかったのに、何故か引き出しの中はそのまんまで誰も使った形跡はなかった。
銃弾が飛び交う映像を見ながらゴンッとデスクに頭を乗せる。
組織が壊滅すれば全て終わり。
そう思っていたはずだった。決めていたはずだった。
それなのに、揺らいでしまっている。
…そういえばコナンくん、工藤邸で私に言ったっけ。
Aさんには幸せになって欲しい。
そんなことを言ってくれたっけ。
幸せになってはいけないと思っていた。
幸せになる資格なんてない。
自分だけがそんなことするなんて、許されるはずもない。
そう思っていたはずなのに。
昨日の降谷さんの言葉が頭を回る。
今度こそ言わせてくれ、と言われた。
何を言われるかはわかってる。
だけど、その言葉を伝えられた時、この決心を突き通せる自信なんて私にはなかった。
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びびか(プロフ) - この作品の作り込みが凄すぎて本当に好きです。。素敵な作品に出会えて良かったです!ありがとうございました! (2023年3月27日 20時) (レス) @page32 id: b527a1d6e3 (このIDを非表示/違反報告)
わか - 想像するだけでこっちが照れてくる (2021年12月7日 15時) (レス) @page30 id: 9e519c38d5 (このIDを非表示/違反報告)
よる - ほぉ…これが降谷さんとの至高の領域だな???ちょっと最上級の語彙力調達してきますね?手持ちの語彙じゃこの素晴らしさは語れないので!!!! (2021年4月30日 23時) (レス) id: 6e0ab3a00d (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - あむむさん» 完結してからしばらく経ってるのに見つけてくれてありがとうございます…!!そんなに褒めて頂けるなんて嬉しすぎて私の心臓が取れます…!25機も消失してご無事ですか!?笑 最後まで読んで下さりありがとうございました!! (2018年11月9日 17時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
あむむ - 初めまして。どうにもこうにも我慢出来なくてコメント失礼します!泣きましたキュンキュンしました心臓取れました辛すぎましたその文章力に脱帽しました!25機くらいは消滅しました…!完結おめでとうございます。お疲れ様でした! (2018年11月8日 21時) (レス) id: eaf01be664 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年9月21日 21時