9話 ページ10
「すみません…」
「え?なにが?」
約束の日、顔を見てまず初めに口から出たのは謝罪だった。
久しぶりに会う降谷さんの顔は、どこからどう見ても寝不足。
随分忙しい時に呼び出してしまったようだ。
流石にこれは申し訳なくて、でも来てもらったからには帰すわけにもいかなくて、中へ案内する。
せめてものお詫びとして、机に並べるのはお高い和菓子。
ソファに座って日本茶を飲んだ降谷さんは、一息ついてから顎に手を当てた。
「さて、どこから話そうかな」
話せば長くなる、というのは電話でも聞いた。
結構ややこしい話らしい。
うーん、と思案顔をしてから、降谷さんは俺に尋ねた。
「犬井犬子、覚えてる?」
「え?あぁ…」
予想してなかった名前が出てきて、少し拍子抜けした。
覚えてる。前に街中で会った降谷さんの彼女だ。
あと、映画館で爆発事件があった時にも降谷さんの隣にいた。
どう考えても偽名だが、映画館の件の時に佐藤刑事達相手に、
「うちの親、頭のネジが飛んでて…!勢いでこんな変な名前付けられたんです!」なんて泣きの演技付きで押し通した彼女はなんていうかうん、すごかった。
降谷さんも久々に安室透になって横からバリ高演技力で口出ししてその場を乗り切らせた。
とんでもないコンビだな、と思ったものである。
その犬井犬子さん(仮)がなにか関係してるのだろうか。
ていうか嘘なのは名前だけじゃなくて…
「彼女って言ってたの、嘘ですよね?」
「ああ。あの時は嘘だった」
返ってきたのはそんな含みのある言い方。
え、ちょっと待て。あの時は…ってことはまさか。
「い、今は付き合ってるんですか?」
「そういうことになるな」
サラリと肯定して、降谷さんは続ける。
「わかってると思うけど犬井犬子は偽名。
今の戸籍上の名前は犬飼A」
…ってことは、恐らくそれも本当の名前ではないのだろう。
しかしそこまで言う気はないらしく、降谷さんは少し眠そうにしながら話を進めた。
「彼女がシャトーだ」
「……はい?」
「で、俺の部下の公安警察」
「待って待って待ってどういうことですか」
今明らかになりすぎた情報が多すぎてわけがわからない。
シャトーって、確か例の捕まっていなかったコードネーム持ちの1人だろう。
「降谷さんの彼女で、部下で、組織の一員…?」
「そういうことだ」
だからどういうことだよ。
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立夏(プロフ) - 利茄さん» ありがとうございます! (2020年4月23日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
利茄 - 面白い! 青井と犬子は、吹きましたww もう、最高ぉーーーー! もし、よかったら、私のも、読んで 下さい! (まだ、完成してないけど) www (2020年4月22日 0時) (レス) id: 1a3e36626c (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - りーぬ@天使が尊いさん» ありがとうございます!!犬井犬子のくだりの時はたまたまポアロの近くを歩いてただけなので行ってないですよ〜! (2020年4月8日 20時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
りーぬ@天使が尊い(プロフ) - すっっっっっっっごくおもしろかったです!!!!!31話で主人公ちゃんがポアロに行ったことないって言ってるんですけど犬井犬子のくだりのときに行ってませんでしたっけ??思違いならすみません(((^^;) (2020年4月8日 16時) (レス) id: 181f09b6df (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 立冬さん» お前wwwwありがとうございます!!!ww (2019年2月6日 17時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年8月8日 22時