38話 ページ40
散々な1日だった。
小さくなってからは高いところの物を取ろうにも料理しようにも毎回Aの『可愛いー!』という声が飛んでくる。
抱き締められるのはそんなに悪くないけど、抱え上げられるのは慣れるわけがない。
それなのにAはことあるごとに俺を人形のごとく抱っこして移動する。
けれどそんな1日ももう終わり。
やっぱり体は子供のようで、22時だなんて時間に眠くなって、二人揃ってベッドの中に入っていた。
明日起きれば体は元に戻っているだろう。
目の前のAがわざとらしくため息をついた。
『あーあ、残念だなぁ…せっかく可愛かったのに』
「お前今日だけでどれだけ可愛いって言えば気が済むんだ。やめろって言ってるだろ」
寝る時まで俺のことを腕の中で抱えるつもりらしい。
抵抗しても無駄だというのは今日1日で嫌というほど思い知らされた。屈辱すぎる。
Aは電気を暗くしながら緩く笑って言った。
『まぁでも、やっぱり私もそのままの降谷さんが好きですよ。今の身長差じゃ頭撫でてもらえないですから』
「…お前ほんと頭撫でられるの好きだな」
『えへへ、降谷さんの撫で方がうまいんですよ〜』
別にそんなもの練習した覚えもないが。
Aは少し眠くなってきたのか、ゆっくりした口調で続ける。
『でも、嬉しかったんです。
私は子供の頃の降谷さんに会ったことないから。
お互い幼少期の写真なんて持ってないですしね。
降谷さんをまた1つ知れた気がして』
「……」
『降谷さんって子供の頃から綺麗な顔してるんですね。でもちょっとやんちゃそうだなあ。喧嘩ばかりしてそう』
「…どうだろうな」
『あ、誤魔化すってことは図星ですね?』
そう言ってAはクスクスと笑った。
『私も悪ガキ相手に喧嘩ばっかしてましたよ。
みんな弱かったからすぐ勝っちゃいましたけど』
「それAが強かっただけだろ…」
『…降谷さん、』
Aが微笑んで俺の目を見る。
そして眠そうにしながらも、言葉を紡いだ。
『また今度、小さい頃の降谷さんの話聞かせてくださいね』
それだけ言ってAは眠りの世界へいってしまった。
…子供より先に寝るのかこいつは。
綺麗な黒髪を一房手に取る。
明日、体が元に戻ったら。
頭を撫でて、嫌になるくらい抱きしめてやる。
今日散々やられた仕返しだ。
規則的な寝息を立てる彼女の額に、軽くキスを落とした。
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立夏(プロフ) - 利茄さん» ありがとうございます! (2020年4月23日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
利茄 - 面白い! 青井と犬子は、吹きましたww もう、最高ぉーーーー! もし、よかったら、私のも、読んで 下さい! (まだ、完成してないけど) www (2020年4月22日 0時) (レス) id: 1a3e36626c (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - りーぬ@天使が尊いさん» ありがとうございます!!犬井犬子のくだりの時はたまたまポアロの近くを歩いてただけなので行ってないですよ〜! (2020年4月8日 20時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
りーぬ@天使が尊い(プロフ) - すっっっっっっっごくおもしろかったです!!!!!31話で主人公ちゃんがポアロに行ったことないって言ってるんですけど犬井犬子のくだりのときに行ってませんでしたっけ??思違いならすみません(((^^;) (2020年4月8日 16時) (レス) id: 181f09b6df (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 立冬さん» お前wwwwありがとうございます!!!ww (2019年2月6日 17時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年8月8日 22時