58話 ページ15
降谷side
モーニングが終わりランチには少し早い時間帯。
お客さんはゼロで、梓さんも買出しに行き、ポアロには自分だけが残っている。
ちょうどそんな時を狙ったように、軽やかな鈴の音が1人の客の来店を告げた。
「おはよう、安室さん」
「コナンくん…いらっしゃいませ」
そこには大きなメガネをかけた小さな探偵さんが、傘を持って立っていた。
昨日の雨のおかげで今日は雲一つない快晴。
それなのになんで傘?と思っていると、コナンくんがカウンターに座りながらその疑問に答えた。
「昨日、Aさんがうちに忘れていったんだよね。
良かったら返しといてもらっていい?」
「ああ、そうなんだ…
わかった、ありがとう」
ポアロに来たはいいけど休みだったところにコナンくんと会って話してた…ってところか。
納得して傘を受け取る。
しかしこの少年は話をそれだけで終わらす気はないらしい。
わざわざ人のいない時間に来てカウンターに座ったのが良い証拠だ。
「…で、昨日なにがあったの?」
ほら見ろ。やっぱり聞かれた。
好奇心と心配とが入り交じった視線を向けられて苦笑いを零す。
あんまり話すべきじゃないけど、コナンくんにはメールを貰ったし、完全に部外者ではない。
昨日メールを見たあと返信するの忘れてたし。
隠すところは隠して、俺は昨日あったことを簡単にコナンくんに話した。
「──って感じかな。
Aは無事だから安心して」
「そっか、良かった…昨日追いかけなかったこと、後悔してたんだよね」
「いやいや、追いかけないでよかったよ」
後悔もなにも子供に追いかけてこられたら普通に困る。
やっぱり危なっかしい子だなぁと思いつつ軽く笑う。
話が終わっても、コナンくんは席を立とうとしない。
昼ごはん食べていくつもりなのかな。
そう思いながら見ていたら、彼は急に顔を上げてニパッと子供らしい笑顔を浮かべた。
うわ、嫌な予感がする。
彼が周りに誰もいないのに俺相手にこの顔をするなんて、よからぬ事を考えている時くらいだ。
コナンくんはそのまま猫を被った可愛らしい声で続けた。
「それで?安室さん!Aさんとはなにか進展あった?」
「え」
……その話に持っていくのか。
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ひなた(プロフ) - 読ませていただきました!初めてゴリラを好きになれた作品なので感謝しております!そして、少し気になったのが、「緑川」というキャラでおそらく諸伏くんの声優さんと名前がごっちゃになってしまい諸伏くんを緑川と書いたものだと思いますがそこが少し気になりました。 (2022年4月30日 21時) (レス) id: dd9bdc737b (このIDを非表示/違反報告)
りーくん - 待って最後の宣伝のやつ二つとも知ってんだけどwwww (2021年9月1日 21時) (レス) id: 6d65fc1765 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 椎名桃乃さん» わー!ありがとうございます…!そんなそんなもったいないお言葉ばかりですがとっても嬉しいです!見つけてくださってありがとうございました!どうぞお暇潰しにでもゆるりと読んで頂けたらと思います!笑 ありがとうございました! (2019年5月26日 18時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
椎名桃乃 - 狂犬ちゃんを読んでぼろっぼろに泣いて、それから此方の作品を見付けて、いい話だなーとほっこりさせて頂きました!立夏さんは文才力が半端ないですね…!他の作品も読んでみたいと思います! (2019年5月24日 21時) (レス) id: 87ecca1cfc (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ウィンディ-lilac-さん» わぁぁありがとうございます!!とっくに完結した作品なのに見つけて下さって感謝しかありません…!本作は初めて書いた降谷夢なのでとても嬉しいです!狂犬の方まで本当にありがとうございます!これからもいっぱい文字書きますね!! (2018年8月27日 20時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年6月10日 21時