可愛くないキミの落とし方【降谷零/安室透】

40話 ページ45

周りには既に倒れた黒いスーツの男が２人。

そしてズシャッと音を立てて最後の１人が床に崩れ落ちた。


『はぁ…なんとかなったか…』


大きく息を吐いて整え、力を抜く。

よ、よかった…もし相手が武器を持ってたら詰んでた…


どうやらこいつらは私を傷つける気はなかったようで、あくまで連れ去ろうとしているように見えた。

どこに何のために連れていこうとしてたのかは知らないが。

しかし、そのせいか私に直接的な攻撃をあまりしてこなかったのだ。

だからギリギリ３人とも倒すことが出来た。

思ったより強かったから割かしやばかったけど。




『とりあえず連絡…零と風見さんに』


額の雨を拭いながら携帯を開く。

うっ…圏外……

路地に入ってるからか。今日雨だしな…

大きな通りに出れば繋がるかな。


倒れている３人がしばらく起きそうにないことを確認してから、早足で路地の出口に向かう。

えーと、確か来る時はこっちを曲がっ…て………



『…え、いやちょっと嘘でしょ』



思わずそんな言葉が飛び出した。

待ってくれ。これは聞いてない。

路地の出口には先程の奴らと同じ、黒スーツにサングラスの男達がゾロゾロ。

20人はいるぞ。ふざけてるのか。


やばい。今度こそ本当に詰んだ。

完全に追い詰められてる。

流石にこの人数を全員倒すのは不可能だ。

後退したところでどうにもならないことはわかってるが、それでも一歩後ろに踏み出す。



刹那、真後ろでジャリ…と何かを踏む音がした。

…っ！？まさかさっき倒した男…！？もう起きて…！


しかし振り返ろうとする前に、ガンッと後頭部を強く殴られた。


『うあ……っ』


鈍い痛みと共に視界が傾く。

薄れゆく意識の中で、目の前に歩いてくる高そうな靴の先が見えた。

そして降ってきたのは聞き慣れた懐かしい声。




｢まさか本当に来るとはね…
君はよっぽど彼が大切らしい｣




…あぁ、そうか。

そういうことね。

頭の中で全てが繋がった。

部屋に仕掛けられた盗聴器も、街中での監視も、今回の黒服たちの襲撃も。

それだけじゃない。他にもあれもこれもそれも。


全部、あなたの仕業だったってわけね。



『…………伊織くん』



雨の中、傘も差さずに佇む元許嫁のお坊ちゃんは、いつものように微笑んで見せる。

それを瞳に捉えたところで、私の意識は途切れた。

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