33話 ページ34
喧騒の中、店長が警察に通報するのが見えた。
ここは夜の街。すぐ近くに交番もある。
少ししたらすぐに警官が来るだろう。
それまでに私は奴の動きを止めなければ。
ふぅ…と息を吐いて集中する。
そしてニコッとあのバカっぽい笑顔を貼り付けた。
『お客様、落ち着いて下さいませ』
｢おい！動くな！｣
『やだなぁ、そんな物騒なもの仕舞ってくださいよ〜！』
１歩ずつまっすぐ標的の方へ踏み出す。
演技はやめない。笑顔も消さない。
私以外の人間に目がいかないよう、相手の視線を掴んで離さない。
笑ったまま躊躇なく近づいてくる私に、彼は怯えるように小さく後ずさる。
バカね、そんなに腰が引けてたらナイフなんて使えないわよ。
｢う、うわぁぁ！！｣
彼はついに堪えきれず私へとナイフを突き刺してきた。
周囲から悲鳴が上がるが、突進してくるそれをかわすのなんて造作もない。
『きゃあ！ごめんなさい足が滑りました！』
なんて言いながら、ナイフを躱してこめかみに本気の蹴りを入れた。
｢うぐぁ…！｣
『わー！また足が滑ったー！失礼しました！』
わざとらしく叫びながら、膝をついた彼の右手をヒールで思いっきり踏んづける。
カランと落ちたナイフを即座に拾い、もう１度腹を蹴り上げた。
床に倒れ込んだ彼の頭をそのまま押さえつけ、首筋にナイフを当てる。
『公安よ。動かないで』
周りには聞こえない小さな声でボソリと告げた。
真っ青になった男は口をパクパクさせる。
声も出せないほどビビるって…そんなに怖かったかしら。
『どうせもうすぐ警官が来るわ。
その前に聞かせてくれる？あの時誰と電話してたのか』
｢し、しし知らない…｣
『はぁ？』
思わず眉間にしわが寄った。
ここまで来てはぐらかす気？
しかし男は焦った顔で首を振り続ける。
｢ほ、本当に知らないんだ…
相手が一体誰だったのか、こっちは何も聞かされてない。顔も見てない｣
『………』
もちろん逮捕したあとでまたしっかり聞かないといけないが、嘘をついてる感じはない。
この件のボスはこいつに一切正体を明かさず取り引きしてたってわけか…
予想してなかったわけじゃないが、あまりの収穫の無さにチッと舌打ちした。
携帯の履歴を調べてなにか出てくればいいけれど、それも期待できなさそうだ。
ちょうどその時、外からパトカーのサイレンが聞こえてきた。
あーあ、始末書が分厚くなりそう。
またしばらく眠れそうにないな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2468人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
立夏(プロフ) - 坂竹会長さん» わわわほんとですね…！ありがとうございます！直しておきます！ (2018年9月30日 21時) (
レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
坂竹会長 - ページ30、あんなとこでが、あんたとこでになっております。間違っていたらすみません。 失礼しました。 (2018年9月30日 20時) (レス) id: d6f7fc00e7 (このIDを非表示/違反報告)
mリン(プロフ) - 立夏さん» まさか見ていただけてるとは……！夢主ちゃんがどうなるか続きが気になります……。お互い更新頑張りましょう笑 (2018年6月7日 9時) (レス) id: 0761f3b4ce (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - mリンさん» わぁぁmリンさん！初めまして！私もmリンさんの小説いつも楽しみに読ませてもらってます！！本人の前で素直になれるのはいつになるやら…という感じですが応援していただけると嬉しいです笑 ありがとうございます！頑張ります！ (2018年6月5日 23時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
mリン(プロフ) - お初にお目にかかります。ちょっと素直になってきた夢主ちゃんがたまらなく可愛いです………。このお話本当に好きです。私のとこの夢主とはえらい違いが……笑 続き楽しみにしてます、更新頑張ってください！ (2018年6月5日 23時) (レス) id: 0761f3b4ce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：立夏
| 作成日時：2018年5月20日 18時
