12話 ページ13
少し歩いただけで辺りは静寂に包まれていた。
ちょっと湿った空気と涼しい風に、なんだか心が落ち着く。
『キャンプって楽しいですね。初めてなんですけど、来て良かったです!』
「…へえ、初めてだったんですか」
二人きりになっても演技を続ける私に、零は少し不思議そうな顔をしたが同じように演技で返した。
盗聴器先輩がね、袖の中にいらっしゃるから。
周りに誰もいなくても聞かれているのだ。
そのままなんてない話をしながら暗い道を歩く。
と、零が「そうだ」と声を上げた。
「Aさん、良かったら子供たちが寝た後に1杯やりません?」
『あはは、実は私も同じこと考えてたんですよ。ちょっぴりお高いワイン持ってきました!』
「やっぱり考えることは同じですね!」
『せっかくの夜ですもんね!
じゃあ10時くらいに────』
刹那、バッと二人同時に振り返った。
視線の先には真っ暗な森が広がっている。
目を凝らす。間違いない。微かだけど聞こえた。
今のは……人の悲鳴。
一瞬零と視線を合わせて暗闇の中へ駆け出す。
嫌な予感がする。
あぁもう!夜には動くつもりだったのに…!
『……っ!』
くそっ…遅かった…!
携帯の懐中電灯は赤々とした血を照らした。
間違いなく致死量だ。
夜の森の中。1人の男性が胸にナイフを突き立てられ死んでいた。
隣で零が舌打ちをする。
この男はここのオーナーだ。
裏取引をしてる疑いがかかっていた。
これは…恐らく取引相手に殺されたのだろう。
しかし、次の瞬間。
少し離れたところで人が動く気配がした。
すかさずライトで照らせば、一瞬だが確かに人影が見えた。
「追うぞ!」
『はい!』
走りながら、急いで携帯を開いて通話ボタンを押す。
『もしもし風見さん!キャンプ場の東の森でオーナーが殺されました!
私と降谷は犯人を追跡中です!』
返事が聞こえる前にぶちっと切った。
木の枝が髪に引っかかったが気にしていられない。
にしても、この方角は確か…
森を抜けた。
パッといきなり視界が明るくなる。
やっぱり。駐車場だ。
軽自動車が出口を抜けるのが見えた。
「早く乗れ!」
『わかってる!』
零のRX-7に乗り込めば、彼は猛スピードで車を発進させた。
いきなりのことにゴンッと派手に頭をぶつける。
『ちょっと!安全第一!』
「逮捕第一!」
もう!カーチェイスするなんて聞いてない!
私は舌打ちして座席の下のノートパソコンに手を伸ばした。
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立夏(プロフ) - 坂竹会長さん» わわわほんとですね…!ありがとうございます!直しておきます! (2018年9月30日 21時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
坂竹会長 - ページ30、あんなとこでが、あんたとこでになっております。間違っていたらすみません。 失礼しました。 (2018年9月30日 20時) (レス) id: d6f7fc00e7 (このIDを非表示/違反報告)
mリン(プロフ) - 立夏さん» まさか見ていただけてるとは……!夢主ちゃんがどうなるか続きが気になります……。お互い更新頑張りましょう笑 (2018年6月7日 9時) (レス) id: 0761f3b4ce (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - mリンさん» わぁぁmリンさん!初めまして!私もmリンさんの小説いつも楽しみに読ませてもらってます!!本人の前で素直になれるのはいつになるやら…という感じですが応援していただけると嬉しいです笑 ありがとうございます!頑張ります! (2018年6月5日 23時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
mリン(プロフ) - お初にお目にかかります。ちょっと素直になってきた夢主ちゃんがたまらなく可愛いです………。このお話本当に好きです。私のとこの夢主とはえらい違いが……笑 続き楽しみにしてます、更新頑張ってください! (2018年6月5日 23時) (レス) id: 0761f3b4ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年5月20日 18時