46話 ページ3
「ちょっと、髪くらい乾かしなさいよ」
『えぇ〜、はぁい』
降谷さんに言われた通りにAさんを風呂へぶち込めばびっくりするくらいの早さで出てきた。
全然あったまってないだろうと思ったがそれはまぁいいとして、まったく髪を乾かさずタオルを首にかけたままウロウロしてるのだ。
料理が出来てもこういうとこは結構ずさんらしい。
「あなたいつもこんななの?」
『んー…前はそもそもドライヤー持ってなかったな〜降谷さんと住み出してからは降谷さんが乾かしてくれるよ』
「…ほんと過保護ね、あなたの飼い主」
てっきりわんこが飼い主様に尽くしているのだと思っていたが、飼い主の方も想像以上にわんこの世話を焼いているようだ。
愛されてるわね、と思った。
この二人のどちらかと話す時は大抵砂糖を吐きそうになる。
多分今回の件も、降谷さんがAさんをあまりにも大切に思うが故のことなのだろう。
聞けばあの人、シャトーを救うために何年も彼女を探し続けていたらしいではないか。
たった1人の女の子を幸せにすることを、自由にすることを、ずっと願い続けてきて、そしてようやくそれが叶った。
あの人の1番の願いはAさんの幸せだ。
Aさんがやっと自由になれた今、彼女の選択肢を自分が奪ってしまうことをなによりも恐れている。
例えAさんが彼以外の人を好きになっても、あの人はきっとAさんの選んだ道を優先する。
自分が彼女の幸せを妨げることだけはあってはならないと思っている。
その思考の末に飛び出したのが「好きな人できたらちゃんと言えよ」なのだろう。
そういうことだ。それだけの話だ。
言葉が足りなさすぎただけなのだ。
相手を大切に思って、幸せになってほしいと願った。それだけのことなのに。
そして多分、言葉が足りなかったのは彼だけじゃない。
「…あなた、彼を好きな理由とか言ったことある?」
『え?』
彼女は髪を雑に拭きながら振り返る。
そして目を瞬かせながら首を振った。
『ううん、ないと思うけど…』
「そう…ちゃんと言った方がいいんじゃないかしら。
言わなきゃ伝わらないわよ」
『……』
彼女はわかっているのかいないのか、短くうんと頷く。
彼女が怒るのも無理はない。いきなりあんなことを言われたら確かに戸惑うだろう。
けれどきっと、降谷さんがそんな可能性を考えてしまった原因の一端は彼女にある。
思わずため息をついた。本当に手のかかる二人である。
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かちかち太郎丸 - すきーーーーーー!!!!一気見させていただきました!!!!超絶大大大大好きです!!!ハッピーエンド最高すぎます、、、!素敵な作品ありがとうございます! (11月22日 22時) (レス) @page25 id: b4989b061f (このIDを非表示/違反報告)
みょん - 、、、天才がここにいる、、、終わりかたがすごい好きです!結婚後の話とか、映画の話とか書いてくれませんか、、、? (2022年6月17日 16時) (レス) @page25 id: 932e0b63ac (このIDを非表示/違反報告)
じゃむ - 間違いなく天才。だいすきです。あなたの夢小説に出会えて幸せ。 (2022年6月12日 22時) (レス) @page25 id: efa5817db4 (このIDを非表示/違反報告)
七海(プロフ) - 映画見てなかったらごめんなさい!!!!! (2022年4月24日 23時) (レス) id: 9795adedef (このIDを非表示/違反報告)
七海(プロフ) - 今日一気見したら、今年の映画っぽくてすご!って思いました!犬飼ちゃん降谷さん大好きです!!! (2022年4月24日 23時) (レス) @page15 id: 9795adedef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年10月1日 22時