63.白色 ページ24
窓から入ってくる風がカーテンを揺らす。
同時に室内の花たちも小さく揺れた。
あれから5日が経った。
Aはあの日以来、まだ目を覚ましていない。
今日も変わらず白いベッドに横たわっている。
病室に飾られた凄まじい数の花は、Aを知る公安の色んな人達から預かったものだ。
事後処理に追われて見舞いに行けないから持っていってくれませんかと託された。
ちなみに公安内の限られた人間は、Aの正体と、ざっくりとした過去を把握している。
教えた時は大の男に「俺たちのAちゃんにそんな辛い過去が…」と揃って泣かれた。
いつからお前らのになったんだよ。俺の犬だぞ。
相変わらず愛されてる奴だ。ちゃん付けされてるとか聞いてない。
そんな部下達が事後処理を頑張っている中、俺はというとほぼ無理やり休みにされた。
休みといってもちょこちょこ顔は出しているが、その度に「なんで来たんですか!」と謎に怒られる始末。
いや、今回の件で俺抜きで進めるなんて無理だろ…
「利き手壊してるんだから来なくて大丈夫です!」って、俺が利き手が使えないくらいで仕事できなくなるわけないだろ。
それでも全員で詰め寄られて「いいからAちゃんの隣にいてあげてください!」なんて言われたら頷かざるをえない。
まさかの全員揃ってちゃん付けしてた。流石にびびった。
あいつら絶対ペットにちゃん付けするタイプだ。
なにはともあれ、良い部下を持ったものである。
そんな休暇も、もう今日で最後。
明日からは溜まりに溜まった仕事を消化しなければ。
医者は順調に回復してきていると言っていた。
すぐに目を覚ますだろうと。
規則正しい呼吸音が聞こえる。
長いまつ毛に覆われた目は固く閉じられている。
それをしばらくじっと見つめて、やがて俺は彼女に声をかけた。
「──で、いつまで寝てるつもりだ?」
ギクッと明らかに体が揺れた。
恐る恐る、瞳が開かれる。
ギギギ、と人形のように首がこちらへ向き、久しぶりに目が合った。
Aは気まずそうにしてから、えへっと誤魔化すように笑った。
『い、いつから気づいてました?』
「いや、はったりだ。なんとなくそろそろ起きてる気がしてな」
『えぇ…うそでしょ、じゃあもうちょっと寝てればよかった…』
そんなふざけたことを抜かしやがったアホに、躊躇なく手刀を落とす。
いたっ!と大げさな声が聞こえた。
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立夏(プロフ) - あかね。さん» 素敵なお言葉になんてお返しすればいいのかわからないくらい今すごい泣きそうになってます、本当にありがとうございます!実は私も当作品が1番気に入ってまして、今でも楽しんでくださる方がいるなんてとっても嬉しいです!長い間お付き合いありがとうございます!! (2020年4月23日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
あかね。(プロフ) - 何回目か分かりませんが、また読み直してしまいました。立夏さんのお話ほんと好きで、中でも狂犬が1番好きで、犬飼ちゃんと降谷さんがやっと掴んだ幸せに毎回涙します。素敵な作品をいつもありがとうございます! (2020年4月22日 13時) (レス) id: 639a2702b7 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - いるかさん» わぁぁ完結して随分立っているのに見つけてくださってありがとうございます…!本当に嬉しいです!最後まで読んで下さってありがとうございました!! (2019年4月25日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
いるか(プロフ) - 素敵すぎる小説すぎて涙が止まりませんでした。これからも、応援してます(´;Д;`) (2019年4月24日 16時) (レス) id: 8c81b6610f (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ウツボカズラさん» 伏線褒めてもらえるなんて嬉しいです…!どちらも夢が叶ったハッピーエンドを無事お届け出来て安心しております笑 最後まで本当にありがとうございました!!これからも頑張ります! (2018年8月11日 1時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年8月2日 19時