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59.滅色 ページ19

ガシャンッと機関銃を組み立てる音が響いた。

その小さな体には不釣り合いなほど大きいマシンガンを手にしたAが、ポーラーの隣に並ぶ。

さっきからずっと俯いていて目は合わない。


続けてゾロゾロと黒い服の奴らが部屋に入ってきた。

見たことのある顔も何人かいる。



「あなたがバーボンね?」


ポーラーの声が聞こえた。

なるほどな…確かに一見優しそうに見える雰囲気を醸し出している。

赤井が「人を安心させて自分側に抱き込むのがうまい」と言っていたのも頷ける。

そんな彼女に薄く笑って返す。



「ええ、そうですよ。話すのは初めてでしたよね?」

「そうね。あなたのことは意図的に避けていたもの」


まぁ、そうだろうな。

Aの方に一瞬目を向ければ、意外なことに目が合った。

先程とは違って何かを決心したようなまっすぐな瞳。

シャトーじゃない、いつものAのような目だ。


…なんだ?なにかあったのか?

不思議に思いはしたものの、ポーラーに視線を戻す。

するとポーラーは構えていた拳銃の安全装置に手をかけた。



「公安が入ってくるまで時間稼ぎする気でしょうけど、そうはいかないわよ。
さっさとケリをつけましょう」


その言葉に小さく舌打ちをする。

ちっ…そう甘くはいかないか。

どうする…!このままでは本当に殺られるぞ。

こんなとこで死ぬわけにはいかないのに。

まだ終わるわけにはいかないのに。


安全装置が外された拳銃を睨む。

避けられるだろうか。

これだけの人数がいれば1発避けたところで意味はないかもしれない。

それでも、と足に力を込めた。



「あの世で後悔することね」


ルージュが引かれた唇が弧を描く。

引き金が引かれる。

火薬が爆発して、発砲音が鳴り響く。

しかしその瞬間、視界の端に何かが飛び出してくるのが映った。



「──え?」


弾丸が白い肌を食い破る。

真っ赤な鮮血が目の前で飛び散る。

小さな体が傾くのが、嫌にスローモーションで見えた。



「──A!?」


俺の声に、Aはまるでイタズラが成功した子供のように、あどけなく笑った。



『言ったでしょう。
私はあなたのために死ぬつもりですと。』


それは。その言葉は。

初めてAを現場に連れていった後に聞かされたものと同じで。

つまり、こいつはもうその時からずっと、こうすると決めていたわけで。


細められた瞳の奥には、小さくも力強い光が灯っていた。

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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
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立夏(プロフ) - あかね。さん» 素敵なお言葉になんてお返しすればいいのかわからないくらい今すごい泣きそうになってます、本当にありがとうございます!実は私も当作品が1番気に入ってまして、今でも楽しんでくださる方がいるなんてとっても嬉しいです!長い間お付き合いありがとうございます!! (2020年4月23日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
あかね。(プロフ) - 何回目か分かりませんが、また読み直してしまいました。立夏さんのお話ほんと好きで、中でも狂犬が1番好きで、犬飼ちゃんと降谷さんがやっと掴んだ幸せに毎回涙します。素敵な作品をいつもありがとうございます! (2020年4月22日 13時) (レス) id: 639a2702b7 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - いるかさん» わぁぁ完結して随分立っているのに見つけてくださってありがとうございます…!本当に嬉しいです!最後まで読んで下さってありがとうございました!! (2019年4月25日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
いるか(プロフ) - 素敵すぎる小説すぎて涙が止まりませんでした。これからも、応援してます(´;Д;`) (2019年4月24日 16時) (レス) id: 8c81b6610f (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ウツボカズラさん» 伏線褒めてもらえるなんて嬉しいです…!どちらも夢が叶ったハッピーエンドを無事お届け出来て安心しております笑 最後まで本当にありがとうございました!!これからも頑張ります! (2018年8月11日 1時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:立夏 | 作成日時:2018年8月2日 19時

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