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新一side
その日はクリスマスだった。
昨夜は蘭と夜ご飯を食べに行き、朝起きたら両親からの大量のプレゼントに驚きつつもテンションも上がり、それなりに楽しんでいたのだ。
けれど、昨日からずっと気になっていることがあった。
送りまくったメッセージに返信は来ない。既読すらつかない。
ため息をつけば白い息が目の前を染めた。
…Aのやつ、ちゃんと降谷さんに言えたのだろうか。
普段はズケズケ言うくせに肝心なところで黙る奴だ。正直嫌な予感しかしない。
今彼女の家に行ってきたが誰もいなかった。まさかほんとに見合いに行ったんじゃないだろうなあいつ…
繋がらない電話をそれでも鳴らし続けながら雪の積もった歩道を歩く。見合いの場所くらい聞いとけばよかった。
と、そんな時。目の端にふと見覚えのあるカラーリングがチラついた。
「…あれ?」
振り返った先には白いRX-7に乗り込もうとしている金髪褐色肌の男性。見覚えがあるっていうかどこからどう見ても降谷さんだ。
一瞬固まってしまったが、すぐにハッとして慌てて彼を呼び止めた。
「降谷さん!」
「え?…あぁ、新一くん」
久しぶり、なんて呑気に言う彼に駆け寄る。
ちょうどよかった、Aと連絡が取れないなら降谷さんに聞けばいい。
「Aのこと、どうなりましたか?」
しかし俺がその言葉を口にした瞬間、彼は明らかに目の色を変えた。
いきなりガッと勢いよく肩を掴まれて思わず仰け反る。
え、え…?困惑する俺を降谷さんはいっそ怖いくらいの目で見た。
「Aがなんだって?」
「え、いや、だから…」
「あの子になにかあったのか?」
「へ…」
この、反応は…まさかしなくても…
お、おいAーーーー!!!!お前結局言ってないんじゃねえか!!!!
意地っ張りなお嬢様に内心思いっきり叫んだ。何考えてんだあいつ!
「様子がおかしいとは思ってたけど昨日も途中で帰っちゃったし今朝も家にいないし、新一くんなにか知らない?」
「なにかって…っ」
大丈夫だよって笑ったくせに…!
「あいつ、親に湯川の御曹司と結婚させられるって…!」
「……は?」
地を這うような低い声が聞こえた。
見開かれた青い瞳の奥がじわりと濃くなる。
予想はしていた反応だ。とにかく今すべきことは…っ
しかし、俺が何かを言う前に降谷さんは俺の方へ詰め寄って言った。
「いま湯川って言った!?」
「…え?」
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羽(プロフ) - とっっても良い話でした!!最後にお話を更新されてからかなり時間が経っているのでもうログインされていないかもしれませんが、どうしても伝えたくてコメントさせていただきました…!素敵なお話を書いていただきありがとうございました! (7月8日 22時) (レス) @page38 id: 9862219e48 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 2周目です!!本当にいい話、、大好きです。書いてくださり、本当ありがとうございました。 (2022年2月4日 23時) (レス) id: b375adba0d (このIDを非表示/違反報告)
m - 立夏さんのお話、内容がししっかりしてて面白くて…他にも作品書いてるのかなって思ったら過去に読んだ事ある作品ばかりですごい驚きました!全部すごい好きな作品だったので…Twitterのフォロー失礼致します! (2021年8月31日 12時) (レス) id: a52571fa0a (このIDを非表示/違反報告)
りー - 叔母様いい人や!姉さんの事好きだったんやな(´;ω;`) (2021年8月22日 22時) (レス) id: 6d65fc1765 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 推しが尊いマンさん» わ〜!ありがとうございます!後半すごく悩みながら書いていたので本当に嬉しいです!最後までお付き合い頂きありがとうございました!! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2019年4月5日 20時