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69:キャラメル ページ21

まだ少し冷たさの残る春の風がふわりと舞う。

いつの間にか肩に触れるくらいには伸びた髪がなびいた。


ICチップの中身は想像以上のものだった。

ディスプレイに映し出されたおびただしい情報は全て黒の組織に関するもの。

各国の諜報機関も誰も掴めていなかったような中枢の情報が集められていた。

組織が取り返そうとしたのも納得である。

それは、組織壊滅作戦にGOサインが出るには十分すぎるようなものだった。


「──結局、お前のお母さんとお父さんは何者だったんだろうな」


屋上の柵にもたれかかった彼が缶コーヒーを片手にそう言う。

私は舞い上がった桜の花びらを目で追いながら返した。


『さあね。あんたが明かしてよ、高校生探偵なんでしょ?』


意地悪く言った私に、彼は──帝丹高校の制服を纏った工藤は、苦笑いを返した。

もう彼のことを見下ろせる日は来ないらしい。

組織は壊滅した。なんの問題もなく、とは言わないけれど、それでも工藤は元の姿に戻れた。

空になった缶を手の中で転がしながら、彼は話を変える。


「それよりA、お前あの人のことはどうなったんだ?」

『…なんのこと?』

「とぼけんなよ、安室さんのことだよ」

『どうって…別に……』


どうもこうもない。あれからそういう話は一切してないのだ。

だってお互いそれどころじゃなかった。

ICチップを見つけてからというものの、私達は作戦が終わるまで怒涛の日々を送っていた。

そんな話をしている暇なんてなかったのだ。降谷さんに至っては後処理だって凄まじいし。


『まぁ追々、ね』

「…俺、これでお前が振られたら安室さんと一生口聞かねえかも」

『あはは、工藤って思ったより友達想いだね』

「だからあとでちゃんと結果教えろよ」

『…え?あとで?』


工藤はコーヒーの缶を蹴り、見事にゴミ箱の中に入れる。

そして私の言葉にはなにも返さないまま出口の方に歩き出した。

…え、結局なんなんだ。いまいちわからない彼の言動に眉を寄せる。

小さい姿に見慣れていたせいか、彼の背中は随分大きく見えた。


『…工藤』

「ん?」


振り返った彼に笑いかけて言った。


『おかえり。3年のテストでは負けないからね』


そのセリフに彼は足を止め、目を瞬かせて笑う。

「おう」と短い返事だけが飛んできた。


1人になった屋上で青い空を仰ぐ。

春風に煽られながら目を瞑った。

そんな時だった。


「A」


その声は、何故だか酷く懐かしく私の耳に響いた。

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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
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(プロフ) - とっっても良い話でした!!最後にお話を更新されてからかなり時間が経っているのでもうログインされていないかもしれませんが、どうしても伝えたくてコメントさせていただきました…!素敵なお話を書いていただきありがとうございました! (7月8日 22時) (レス) @page38 id: 9862219e48 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 2周目です!!本当にいい話、、大好きです。書いてくださり、本当ありがとうございました。 (2022年2月4日 23時) (レス) id: b375adba0d (このIDを非表示/違反報告)
m - 立夏さんのお話、内容がししっかりしてて面白くて…他にも作品書いてるのかなって思ったら過去に読んだ事ある作品ばかりですごい驚きました!全部すごい好きな作品だったので…Twitterのフォロー失礼致します! (2021年8月31日 12時) (レス) id: a52571fa0a (このIDを非表示/違反報告)
りー - 叔母様いい人や!姉さんの事好きだったんやな(´;ω;`) (2021年8月22日 22時) (レス) id: 6d65fc1765 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 推しが尊いマンさん» わ〜!ありがとうございます!後半すごく悩みながら書いていたので本当に嬉しいです!最後までお付き合い頂きありがとうございました!! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:立夏 | 作成日時:2019年4月5日 20時

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