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『うぇ!?泣い』
「泣いてない」
『否定が早い』
いや、確かに泣いてはないけど。
秒で否定されてしまったが、それでも降谷さんは今にも泣きそうな顔をしている。
ぎゅっと眉を寄せて、口を固く結んで。
ほんとに、めちゃくちゃ耐えてるって感じ。
えぇ?そんな、え、まだ泣くには早くないですか?だってただの試着ですよ?なにをしんみりしちゃってるんだか。
私は茶化すように笑いながら言った。
『あはは、なんですかなんですか。泣きそうになるくらい私が綺麗ですか?』
「…うん」
冗談のつもりだったのに頷かれてしまった。
思わぬ返答に息が止まる。
降谷さんはその泣きそうな顔のまま、幸せそうに微笑んで言った。
「綺麗だ」
『……っ』
だ、から…!こういうとこがずるいんだこの人は…っ!
普段バカみたいな軽口しか言わないくせにこんな時に限って不意打ちで言ってくるんだから…!
何も返せなかった私に、降谷さんは一歩歩み寄って手を伸ばす。
けれど頬に伸びてきたそれはなかなか触れようとしない。
まるで割れ物を扱うかのようなその手つきに、思わず小さく吹き出してしまった。
『どーんっ』
「うわ!?」
まったくもう、私はそんな簡単に壊れるようなものじゃないのに。
目の前の降谷さんに思いっきり抱きつく。
彼はわたわたと慌てたものの、やがて私の肩口で軽く笑ってくれた。
『大丈夫ですよ、ちゃんとあなたの隣にいますから』
「…うん。そうだよな、わかってる」
ようやく私の腰に腕が回される。
サラサラの綺麗な髪が首筋に当たった。
「絶対幸せにするから」
そう言って降谷さんはぎゅううっときつく私を抱きしめる。
けれど私はその言葉にまた笑ってしまった。
絶対幸せにするって…もう、ほんとなに言ってるんだか。
『バカ。私は降谷さんが…』
そこで1度言葉を止める。
そして言い直して続けた。
『零さんがそばにいてくれるだけで幸せです』
──景光さん、あなたからの最後の頼みは必ず聞き届けますから。だから絶対、見守っていて下さいね。
溢れそうになった涙をグッと堪えた。
零さんが顔を上げて、私の耳元で碧の雫が揺れる。
コツンと額を重ねて、二人同時に笑いあった。
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なでぃあ - すみません💦立夏さんの作品一覧の中でパスワード保護がかかっている作品を読みたいのですがパスワードを教えて貰えないでしょうか? (2023年1月10日 21時) (レス) id: b7c646722c (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - over the rainさん» ありがとうございます!!私の文章で幸せになって頂けたなんて私の方が幸せです!笑 ありがとうございました!! (2020年3月14日 22時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - 話の構成も文章の書きかたも素敵で、幸せな気分です!これが神だ。嬉しくて泣けました(マジ)応援してます! (2020年3月5日 10時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - なのなの-VIIさん» わぁ〜!とってもご無沙汰な更新でしたが読んで頂けるなんてすごく嬉しいです!!ありがとうございます!!私もはっぴー満点で眠れます!笑 (2020年2月9日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
なのなの-VII(プロフ) - 更新ありがとうございます! めっちゃ嬉しいです! おかげで幸せな気分で寝れます! (2020年2月8日 23時) (レス) id: 3d69e77dfd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年11月18日 21時