御伽噺ノ華開ク 弐【鬼滅の刃】

伍拾漆話　悪鬼 ページ20

『はぁっ、はぁっ……炭治郎！！』

遅れた！！

炭治郎に一人で戦わせてしまった……！

あの鬼は蕨姫花魁だ。いや、蕨姫花魁ではない。上弦の陸、堕姫だ。

「遅いわね。欠伸が出るわ」

その瞬間、堕姫の帯で炭治郎が飛ばされた。上手く受け身が取れなかった炭治郎は、何度も何度も地面に打ち付けられる。

堕姫の帯が炭治郎の頚に届く前に、刀で帯の軌道を変える。

「菫っ……！」
「柱……それに稀血ね。アタシ程じゃないけど、綺麗な顔してる。なら……」

無数の帯が私向かって飛びかかってくる。

「殺して喰ってあげるわ！！」

ギンッギンッと刀が鳴る。帯の勢いは凄まじく、この技で何人殺してきたのかと思う程。

途中、炭治郎も回復し加勢に入ったが、やはり二人だけでは手も足も出ない。

炭治郎の鼻や、私の目を持ってしてでも、弱点には掠りもしない。もう少し、宇髄さんが来るまで……。

「ふふっ。不細工は頑張っても不細工なのよ」




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暫くそのまま戦っていると、四方八方から帯が飛んで来て、堕姫の体に入って行った。

気味の悪い光景だ。だが、堕姫が止まっている今がチャンス。炭治郎と共に刀を振り回す。

『消えた……？』
「やっぱり"柱"ね。もう一人いるのね。良かった。あの方に喜んで頂けるわ……」

堕姫の姿が変わる。色も変わる。禍々しい黒。気持ちの悪い黒。

悪鬼の黒。

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