王と騎士とお姫様【月永レオ】 (ページ39)

今日:9 hit、昨日:2 hit、合計:124,452 hit

助け舟は来るページ39

ステージへ上がれば、彼は仁王立ちをして立っている。

待ちくたびれたぞ、という笑顔とともに。

「さあ、お前で最後だ！ただ、お前は騎士として来ると思ったんだけど驚かされたよ。なぁ、女王陛下？」

彼がポロリと落とした言葉に会場はどよめく。

騎士としてということにもそうだろうけれど、あたしはあくまでお姫様だったのだから、急に進化していて驚くのも無理はない。

でも、誰もが1番最初に感じた違和感はまだ他にもあった。

あたしの頭に付けられたそれは、スポットライトの光を跳ね返して綺麗に光っている。

クラウン

勝利の女神様が用意してくれた。
あたしの意を汲んで急いで作ってくれた。

登場した時から身につけていたので、最初は誰もが釘付けになったんだろうな、ふふん♪

「さあ、始めよう！！俺たちのアンサンブルを！」

片手にマイクを持ち、スっと腕を浮かせこちらに手を差し伸べてくる。

同じように無言で笑みをこぼし、彼に手を差し出した。

そして、歌い出しは敵の王。

さすが、Knightsの王だけあって、実力は素晴らしい。
あたしはそれをただひたすらにこの視界に入れることしか出来ないのが、なんだか癪だった。

。
。
。

「次はお前の番だぞ、女王陛下。」

歌い終えてかはそこそこ時間はたった。
だけど、いまだに歌い出すどころか声1つ発しないあたしに、彼は睨みをきかす。

歌いたいのは山々だけれど、なんせ声が出ないからなんとも言えない。

決してノープランという訳では無いけれど、ノープランに等しい現状に、やはりあたしにはまだ早かったのか、と自虐ネタが走る。

舞台袖をチラリと見れば、ハラハラとした顔のみんな。その後ろで手を組んで祈るようにあんずちゃんがいた。

あぁ、何をしているんだろう。
分かっていたのに、こんな自分に今何が出来るのか…。

ずっと押し黙るあたしを流石に心配したのか、近寄ってマイクに音が入らないよう、大丈夫か？と小声で聞いてきた。

敵なのに。

クスリとまた笑みが零れた。

顔を上げてインカムを音にする。

一瞬ザザッと鈍い音が走り、その数秒後あたしは口を開けた。

『〜っ！！！っ！っ！！！』

まあ、分かってはいたけれど声なんて出るはずもない。

月永レオの不戦勝。

誰もがそう思い、スタッフも、後ろの画面にナイトキラーズの勝利を移しだそうとした時。

「はぁ、本当に手のかかる女王陛下だねぇ？チョ～うざぁい！」

ひとつの声が会場に響いた。