王と騎士とお姫様【月永レオ】 (ページ33)

今日:10 hit、昨日:2 hit、合計:124,453 hit

頑張りやなお姫様ページ33

「ストレス、だな。首筋を触ったけど特に腫れてる箇所はないしな〜。色々負担がかかって、こうして声が出ないってことで最終的なSOSが出たんだろ。体は、めちゃくちゃ悲鳴をあげてるぞ。」

保健室にたどり着けば、珍しくそこに先生は居た。
泉さんが、珍しいと言葉を漏らせば、勘がしたと茶目っ気たっぷりで返してきた。
それに泉さんは最悪な勘、と嫌な顔をする。

ことの経緯を泉さんに話してもらい、口を開けろと言われ、言うことを聞いて先生に診てもらう。

そして結果が冒頭の発言だった。

隣の泉さんは、ハッとしたように顎に手を添えていた。
どうやら、心当たりがあるらしい？

「あいつが…あんずが、Aは…。ちょっと、顔見せて。」

ムニッと頬を彼の両手で包まれたかと思えば、グイッと顔を寄せられる。
危うく今度は泉さんを引っぱたくところだったが、ギリギリで思いとどまった。

あたしをじっと見つめる泉さんは、顔を離したかと思えば、はぁ、とため息をつく。

「あんたねぇ。まさかとは思うけど、ろくに寝てなかったりしたの？目の下の隈、メイクで隠してるみたいだけど。よくよく見ればうっすら出てる。腰周りもだいぶ細くなってる。痩せたね。」

腰周りは触られた事は無い。
きっとその持ち前の観察眼で、あたしが細くなったことを理解したのだろう。
ちょっとというか、さすがにめちゃくちゃ引きそう。

あたしはすぐさま近くにあった紙とボールペンを拝借して、スラスラと文字を並べる。

＜最近は少し寝不足だったのと、食欲が落ちていました。あと、体力作りのために朝めちゃくちゃ走ってました。練習メニューもちょいと弄っていつもの倍に。＞

その文字列を見れば、また大きなため息をひとつこぼす。

「原因は、どうやらそれのようだなー？」

持っていたペンをくるくると回す佐賀美先生はどこか気の抜けるようなオーラを持っている。

そして本日三回目の大きなため息を零した泉さんは、またあたしの腕をつかみ、行くよ、とだけ言って保健室から連れ出していく。

後ろからは先生のお大事に〜という呑気な声が小さく聞こえた。

.