王と騎士とお姫様【月永レオ】 (ページ32)

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お姫様の作戦は崩れ落ち。ページ32

それは、ジャッジメントを明日に控えている、という重要な日に起こってしまった。

あたしたちKnightsは振りやパートの最終確認のため、午前中は授業を受け午後は公休、レッスンルームに篭っていた。

各々の手元にあるのは、あの日王様から渡されたものを改良した楽譜。

音のズレはないかをピアノで弾いて、1人ずつチェックをしていた。
あたしのチェックは凛月くんにピアノを弾いてもらって。

「はい、そろそろ休憩終わりねぇ。次はセットリスト、最初から最後まで通してみるよ。」

パン！と手を叩き緩くなった雰囲気を引き締める泉さん。
すると、ペットボトルやらタオルやらを置いて、楽譜に持ち替えパタパタと泉さんの元へみんな行く。

そして、みんながそれぞれの位置に付き明日のために作った曲のイントロが流れ出す。

歌い出しはあたしのパート。
ｽｯと前を見つめ口を開き、割り当てられた部分を歌おうとしたその時だった。

『っ!…っ！！…〜っ！！！！』

「…Aちゃん？」

中々歌い出さないあたしに違和感を覚え始めるKnightsの皆。
イントロだけが虚しく独り歩きをしていく。

異変を察知した泉さんは急いで曲を止めて水の入ったペットボトルを渡してくれた。
それを軽く飲み、また声を出そうと試みる。

だが……

『…っ…？』

あたしの喉からは1つの音も出てこない。
音の乗らない空気があたしの周りにあるだけ。

「お姉様…まさか、その…声が…？」

目を丸くさせながら、口元を手で覆い、ショッキングな顔をする末っ子すーちゃん。

これには、気だるげだった凛月くんも血相を変える。

「ちょっと、首元押すね。」

するりと冷やかな指があたしの首元の至る所をグッと押す。
痛いところはなくて、ただされるがまま。
それを紅い瞳がじっと見つめてくるもんだから、居た堪れない。

やってしまった。
ここにきて、まさかの事態。
あたしの練りにねった作戦が全て崩れ落ちていく音がする。

「とりあえず、保健室に行きましょう。ね、Aちゃん？泉ちゃん？」

あたしと泉さんを交互に見て、そうだねと頷く泉さん。

「こいつのことは俺が保健室に連れてくからナルくん達は各自で練習してて。」

いつもの完璧フェイスとは程遠く、焦りと困惑をその顔に滲ませ、あたしの腕を掴む。

ほらいくよ、と掴んだ腕をグイグイ引っ張られながら、あたし達はレッスンルームを後にした。