王と騎士とお姫様【月永レオ】 (ページ23)

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眠り姫と未熟な王様② ページ23

誰かが、近づく音が聞こえる。
さくさくって。

あたしが、初めてこの学科の芝生を踏んだときのリズムにそっくり。

なんだろう、暖かい。
誰かから向けられている視線が、暖かい。

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ぽかぽかと日向ぼっこをしていていつの間にか眠気を誘われてしまっていたらしく、誰かの視線を横にぐっすり熟睡。

傍にあったスマホの電源をつけて時間を見れば、デジャヴ。
ちょうど、4限目が終わるあたりの12時すぎだった。

我ながら、午前中疾走しマースという宣言通りで素晴らしい。

『ん…。』

あたしは重たい体をﾑｸｯと起こしてボーッと塀を見れば、後ろがなにやらカサカサと音を立てていることに気づく。

くるり、と振り返れば、猫のように背中を丸めた藍色のような青色のよなうパーカーを着た橙色の髪を横で一つ結びにした人。

なにやらせっせと作業をしているらしく、その人の周りには紙が散乱している。

どうやら、あたしが起きたことにも気づいていないようで、すんごい集中してるから、そもそもあたしがここで寝ていたこと事態に気づいていたのかもわからない。

そこら中に散らばった紙を1枚取り、あたしは目を見開く。

『楽譜だ…』

音符の並び方から、暖かい曲なのは一目瞭然。
緩やかだけど、眠くならないような、楽しい音楽。

まるで名曲だ。
誰かが詩を付けて誰かが声に出したら、どんなに素晴らしい音楽になるんだろう？

あたしは興味をそそられてしまった。
名前も、ましてや、顔さえも今見えていない。目覚めたら目の前にいたこの人の音楽に。

未だにあたしには気づいていないようなので、あたしは楽譜を集め、順番に並べ直し、寝起きで詩は思い浮かばないから鼻歌を歌う。

『〜♪』

ああ、やっぱりそうだ。
この曲は暖かい。

陽だまりの中にいるような曲。
太陽の曲だ。

集めれるだけ集めたつもりの楽譜、1度全てを奏で終えてしまったから、周りに続きがないか探すも、どこにもそれらしき紙はない。

うーん、と必死に探したが、やはり見つからないものは見つからなかった。

「おい。」

ただ、その代わりと言ってはなんですが♪というように、頭の上から誰かの声が降ってくる。

ぱっと顔をあげれば、視界には、いっぱいのアップルグリーンの瞳。

『ひっ…いやぁぁぁぁっ！！！！』

ﾊﾞｯﾁｰﾝ!!!

あたしの悲鳴と共に平手打ちの音が響いた。

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