先輩×後輩=(？)【朔間凛月】 (ページ21)

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4月

私は真新しい制服を見に纏い、引きこもってしまった兄を置いて1人、勢いよく家を飛び出した

別に、遅刻しそうだったわけじゃない。つい先日、入学式を終えたものだから学校生活が楽しみで仕方がなかった。

はずだったのに。

「なあ、あれって。」

「だよな、見た目からそうだろ。」

なんろだう、視線を感じる。
それどころか、私に向けられた何か「良くない」会話が微かに耳まで届いていた。

『(ああ、嫌だな。この空気...)』

一体何が原因なのか、知るはずもないし、術だってない。
怖い、嫌だ、なんて思ってそそくさと教室に向かっていた。

結局どこを通ったって、嫌な声。収まることは無かったのだけれど。

限界だ。

「ふあ～...あんたら、好きだね。性悪な女子たちみたい。セッちゃんよりも、タチ悪そう～...♪」

『あ...』

一言くらい文句を言ってやろうと思っていた。
こそこそ言うくらいなら真正面から言ってみろ、と。

そしたらどこからともなくその人は現れて、私を背に隠し、ヒソヒソと話していた生徒たちに向かって優雅に微笑み嫌味ったらしく言った

決してガタイが言い訳でもなく、心配になるくらい細そうな、でも大きな背中に護られて不思議と安心したのは事実だった。

「セッちゃんがこのこと知ったらさぞお怒りになるだろうねぇ♪セッちゃんだけじゃなくて～...「王さま」も。」

しっしっと彼らを追い払ったあと、綺麗な黒髪を揺らしてその人は私に向き直った

そしてゆっくりと頭を撫でてからまた優雅に微笑む。

『っ！』

確かに心臓が大きく跳ねる感覚を覚えた。

「アンタは特別な存在だから、妬む奴らとかいると思うけど強く行きなよ...♪」

『え、あ...』

特別な存在だから、とは私が唯一の女子生徒だったからなのか。
よく分からないけど、早い鼓動に息苦しさを覚えてまともな返事さえ出来ない。

『あ、ありが、と...』

「ふふ、どういたしまして」

助けてくれた。たったそれだけ。

この時初めて会って会話をして、そのあとは中々話す機会もなく会うことだってなかった。

だけど、好きになる理由なんてこれだけで十分だったと思う

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